プラント教授の乳がんとの闘いー実践編
Your Life in Your Hands
Plant Program
| 私(プラント教授)は、本書(「プラント教授の乳がんとの闘い」の前編を参照)の中で、乳製品が乳がん(前立腺がんも)の発生・進展の主たる要因であることを突き止め、乳がんを予防し、たとえ乳がんになっても命を失わない生活習慣の改善方法を述べてきた。しかし、どうしても解らないことがある。本書で述べた情報はすでに何年も前からときには数十年も前に、学術論文として専門家の審査を経て掲載されていたものである。
それなのになぜ今まで、このことが一般の人々に知らされなかったのか? 私は、自分が関係している学問分野の論文はもとより、それ以外の分野の論文をたくさん読んできた。新聞も読むしテレビも観る。ほとんどの人と同じように、最新の情報に目を通してきた。しかし、自分が乳がんになるまで、乳製品と乳がんの関係について聞いたことは全くなかった。 なぜなのか? メディアには情報があふれている。乳がんの予防や治療についてもたくさんの情報がある。しかし、これらはいずれも単純化し過ぎていたり、非科学的で矛盾に満ちている。本書で扱ったような乳製品が悪いという情報は全くなかった。どうして乳がんの権威とされる人たちは誰ひとりとして乳製品を取り上げなかったのか。 危険情報を伝えて行動変容を起こす予防法を開発するかわりに、行政や医師は相変わらず、がんを早期に発見して、くすりや手術などの治療で対処しようとしている。乳がんの予防に関しては乳製品を大豆製品に変えることで十分なのに、わざわざタモキシフェンを作って飲ませようとする。IGF-1の危険性を熟知している研究者は、自分の研究成果に基づいて乳製品の消費量を減らすように警告を発することなく、IGF-1受容体に対する抗体をつくろうと製薬会社と共同研究を行っている。この研究者は、自らは乳製品を口にしないが、大衆に乳製品の摂取を減らすように忠告したところで、巨大な酪農業界の怒りを買うだけで何の利益にもならないと思っているのだろう。受容体に対するモノクロナル抗体を開発しようとする研究なら、製薬会社がいくらでも研究費を出す。万が一成功したら、赫々たる名声とともに巨万の富を手に入れることができる。大方の研究者の精神構造はこのようなものになってしまった。 乳がんや前立腺がんを予防するには食習慣を改めることが先決である。もし万が一、そのような病気になったとしても、手術・放射線照射・薬剤治療に耐えられるような身体を造り上げることによってかけがえのない命を失わなうことはない。 プラント・プログラムー食事編 はじめに プラント・プログラムは7つの食事原則と5つの生活原則からなる。これらはすべて、私自身が進行がんを克服するために実践してきたものである。この方法に従っていただければ、乳がんと前立腺がんを予防することはもちろん、乳製品を除いた場合に起こるのではないかと誤解されている骨粗鬆症の心配も要らない。さらに、この方法はあなた方の日常生活に簡単に組み込むことができる。厳しい食事制限ではなく、食生活の手助けぐらいに考えていただきたい。 がんに打ち克つ食事は科学的根拠に基づくものでなくてはならない。本論に入る前にここで基礎的なことを述べておこう。 野菜と果物ががんの予防に有効であるという説に異論を唱えるがんの専門家はいないだろう。食品の残留農薬や添加物をできるだけ少なくすることに反対する専門家もいないだろう。それなのに、正統派のがん専門医は「がんの食事療法」に対して、多くは否定的な、よくても曖昧な態度を示すのはなぜだろうか。 それにはいくつかの理由がある。一つは、一部の患者たちが極端な食事を採用して、体力が必要なときに低栄養状態に陥ってしまうことがあるからだ。一部の代替治療の専門家と称する人たちは赤み肉、小麦製品、加工食品を完全に禁じた上に「解毒」という名目で多量の果物をある種の野菜と一緒に摂ることを強要する。ときには、これだけでは身体が保たないからと、高価なビタミン・ミネラルなどのサプリメントを買わされる。 治療根拠が全くない同毒療法(=病原因子と同じ性質をもつ物質を少量ずつ与える治療)を推奨する詐欺師まがいのものもいる。チャリング・クロス病院に入院中の胃がん患者にこっそりと花崗岩の粉末を飲ませている女性治療師と話をしたことがある。彼女によると、花崗岩の多いウェールズ地方に胃がんが多いというのがその治療の根拠であった。だから胃がんの原因は花崗岩で、その粉末を飲ませるとがんが治るというのだ。私は地球化学の研究者である。ウェールズ地方に花崗岩はほとんどないこと、胃がんの多い地域の岩石は花崗岩ではないことを話したところ、彼女はびっくりした。放射線治療の副作用の予防に放射性物質を処方する治療師もいた。たとえいかに希薄な濃度のものであっても、放射線曝露をできるだけ少なくすることが重要と考える私の理解を超える治療法であった。 ある乳がんに関する書物には、若くして子どもを産んで授乳するものは乳がんになりにくいと書かれていた。この妊娠・授乳が乳がんを予防するという考えは、イタリアの尼僧(生涯未婚)に乳がんが多かったという観察報告に基づいている。しかしながら、この報告は単に、独身の尼僧に乳がんが多かったというだけで、妊娠・授乳が乳がんを予防することを観察したものではない。かつての修道院の生活は、一般人の生活に比べて非常に豊かであったという事実を忘れてはならない。私は、乳がんになった修道女は大量の乳製品を摂取していたと推測している(訳者:この点に関しては本ホームページの「牛乳(酪農)の歴史」を参照してほしい)。先にも述べたが、子どものいない女性あるいは妊娠を遅らせた女性では乳がんになるリスクが少し高くなると言われている。このことは日本などのアジアの豊かな国々にもあてはまるだろう。これらの国では、晩婚・高齢出産のキャリア女性ほど欧米型の食生活を取り入れることが多いからだ。 避妊ピルを服用している若い女性の乳がんリスクはそれほど大きいものではないがあきらかに上昇する。ただし、服用を止めて10年以上経つとリスクは消失する。妊娠率の高い10代後半から20代前半のピル服用者の乳がんリスクは低いが、20代後半の使用ではリスクが高くなる。とくに、40代の前半までピルを使っていた女性では乳がんリスクはかなり高くなる(1)。 雑誌などに登場する「乳がんを防ぐ食事」の多くは科学的根拠もなければ、論理性もない。たとえば、最近の大豆を推奨する記事に、大豆はよいがヒヨコマメやヒラマメには予防効果がないというものがあった。この記事のライターは、これらはみなマメ科の植物で同じイソフラボンを含んでいることを知らないのだろうか。さらに困ったことに、このライターは大豆ミルク(豆乳)、オートムギミルク、ライスミルクをヤギのミルクと一緒に乳製品の中に加えていた。 最近、ある全国紙に連載された「がんを防ぐ食事」に「パースニップ(訳者:ヨーロッパ原産のセリ科のニ年草、白ニンジンとも言われる)、ジャガイモ、ソラマメ、カボチャ、蜂蜜、スイカ、パイナップル、クスクス(訳者:モロッコ、チュニジアなど北アフリカ諸国の伝統的な民族料理)、ミューズリー(訳者:大麦、小麦、オート麦などにドライフルーツやナッツを混ぜた朝食のシリアル)はインスリンの分泌を増やすから乳がんを起こす」という記事が掲載された。これらはすべてよい食品で、私もたくさん食べている。また、最近出版された「乳がん患者の食事」に関する本には生きたヨーグルトを何の根拠もなく、乳がんの化学的予防食品として推奨されていた。こんな有様では、いったい何を食べたらよいのだと人々が迷うのも無理はない。 ほとんどのがん食事療法は、マックス・ゲルソンが1958年に出版した書物(2)に基づいている。ゲルソン博士の基本的な考えは、がんは、臓器(とくに肝臓)が調和を失って起こるというものである。がんを治すには、肝臓と免疫系に負担を与えないように動物性食品、塩分、カフェインを避け、果物と野菜で体内を解毒して身体の調和をとりもどすことが重要だと強調している。彼の書物で禁止されている食品は、タバコ、塩分、香辛料、茶、コーヒー、ココア、チョコレート、アルコール、精白砂糖、精白小麦粉、キャンディー、アイスクリーム、クリーム、ケーキ、ナッツ、マッシュルーム、すべての大豆製品、ピックルス、パイナップル、イチゴ類、アボカド、キウリ、水(水の代わりに新鮮なジュースだけを飲む)、缶詰などの保存食品、塩漬け野菜、還元あるいはビン入りジュース、すべての脂肪、油、塩分代替品、フッ素を含有する食品である。バター、チーズ、魚、卵、牛乳は治療の初期には禁止されている。しかし、困ったことに、カッテージ・チーズ、バターミルク、さらにヨーグルトはがん治療について述べているところで食べてもよいことになっているし、サンプルメニューの中にも入っている。不幸にも、ゲルソンは、栄養源として生の子牛の肝臓をジュースにして飲むよう勧め、コーヒーとひまし油で浣腸することを勧めている。ゲルソンの本は農業の工業化が今のように進展する前に書かれた。しかし、ゲルソンは土壌から栄養分が失われていることと土壌が化学物質で汚染されることを予見していた。 ゲルソンの食事療法はアメリカのほとんどの州で法的に認められていない。ゲルソンの娘のシャーロットは「金儲けに走る製薬業界の陰謀」だと非難している。ゲルソンの食事療法は厳格であり、しかも長期間続く。その処方を完全に守らなければならないから、食事を用意するのに時間がかかる。1時間毎に12時間、新鮮なジュースを作ってすぐ飲まなければならない。イギリスの医師の多くはゲルソンの食事療法を疑っている。それにもかかわらず、ゲルソン療法が効いたと証言する患者はたくさんいる。もちろん、多くのお医者さんは「そんなのは単なる奇跡だ」と一笑に付してしまうのだが。 私の食事の出発点もゲルソン・ダイエットであった。ただし、新しい科学的知見に基づいて大幅に変更した。たとえば、私はゲルソンが禁じた大豆製品の摂取を勧めている。大豆が乳がん・前立腺がんを予防するという証拠があるからだ。それから、ゲルソンが勧めた食品で科学的根拠がなく、それが入っているがために面倒で続けられなくなっているものを除いた。ブリストル・ダイエットも基本的にゲルソン・ダイエットと同じ原理に基づくもので、良い・悪いの食品リストが違っているだけである。前に述べたように、ブリストル・ダイエットを採用していた私に乳がんが再発した。 西洋医学を学んだ医師が、がん治療の一部として食事療法を受け入れ難いと思うのにはそれなりの理由がある。化学構造が判明していて、量を計ることができる純粋な化学物質を用いるように医学教育で訓練されてしまったのだ。これらの化学物質は、まず培養細胞で試され、次いで動物で試され、そして最後に人間で試されて薬剤として治療に用いられる。皆さんは、映画(とくにアメリカの西部劇)で、ペテン師かニセ医者が特効薬だといってインチキ薬を売り歩く場面をみたことがあるだろう。現在の医学はこのようなことが起こらないように厳重に管理されているのである。 狭心症や心筋梗塞の予防と治療に食事が重要であるように、乳がんや前立腺がんの治療にも食事に対する配慮が不可欠である。しかし、現代の医師はこれらの病気を誘発する食事についてほとんど学んでいない。ここで述べるプログラムは乳がんや前立腺がんの治療にあたる医師やその他の医療関係者に知っておいて欲しいことである。私は、この食事プログラムを実践したから、抗がん剤治療で頭髪が抜けることもなかったと信じている。 私がこのプログラムを実践して7年になる。稠密なスケジュールで長時間、たびたびの海外旅行を伴う、責任の重い仕事をこなしたが、栄養不良の徴候は全く現れなかった。そればかりか、多くの人々に私は非常に健康そうに見えるらしく、55歳という実年齢よりもずっと若いと思われている。がんの治療が終わってから、深刻な病気になったことは一度もないし、それまで度々悩まされていた風邪や咽の痛み、真菌感染、爪の根元の炎症、膀胱炎などが完全に消えてしまった。さらに、虫歯の数が著明に減った。 今までに63人の乳がんになった女性にこの食事を実践してもらったが、乳がんが再発した人は一人もいない。このうちの一人は、カナダの友人の70歳になる母親で、骨転移のある進行性乳がんを患っている女性であった。初めての子どもを母乳で育てているときに乳がんという診断を受けた若いイギリス女性も含まれている。私が勧めた食事を拒否した人や実践しているといいながら偽った人が5人いたが、これらの人たちは気の毒なことに乳がんが再発し、そのために亡くなった人もいる。 最良のがん予防食は、動物性の食品を全く食べない厳格なビーガン(vegan)の食事だろう。私も最後のがん再発で切り替えた食事は完璧なビーガン食で、腫瘍が消えてからも8ヵ月続けた。もしあなたが植物性食材だけで生きるビーガンになれたらそれに越したことはない。しかし、ビーガン食では亜鉛とセレン、ビタミンDとB12が欠乏しないように気をつけなければならない。 ビーガンとベジタリアンを混同してはならない。肉こそ食べないが、その替わりに乳製品を大量に食べるベジタリアンが多いからである。市場に出回っているベジタリアン用の調理済み食品パックにはとりわけ多量の乳製品を含んでいるものがある。あなたが乳がんや前立腺がんを回避するためにビーガンになるのはいいが、決して乳製品を許容するラクト・ベジタリアン(肉は食べないが乳製品は食べてもよい)になってはならない。もし、あなたががん予防ダイエットをすすめられたら、乳製品が含まれているかどうかよく調べることが肝要である。種類が何であれ、少しでも乳製品が含まれていれば、そのダイエットを無視することだ。 知り合いの中流の女性の中に、赤肉を避けて、その代わりにカッテージ・チーズとヨーグルトをたくさん食べる人が大勢いた。一部は健康やライフスタイル関連の雑誌の影響だろうし、一部はリンダ・マッカートニー*のような動物の権利擁護の活動家の影響もあったのだろう。リンダは最近、乳がんで死んだ。忙しく働く女性が肉のない食事にしようとすれば、面倒なバランスのとれたビーガン・ダイエットを作るよりも、カッテージ・チーズとヨーグルトとパンと野菜という食事は簡単で便利である。結局、忙しい女性ほど乳製品の消費が増えてしまう。 女性の多くは骨粗鬆症という言葉に脅かされてきた。骨粗鬆症になると、骨がスカスカになって折れやすくなる、歳をとってからの骨折は寝たきりになってしまうことがある。骨粗鬆症の予防には若いころからたくさんのカルシウムが必要である、乳製品にはたくさんのカルシウムが含まれている、骨粗鬆症の予防には乳製品の摂取を増やさなければならない、と言われ続けてきた。牛乳・乳製品はカルシウムと同義に扱われてきた。しかし、牛乳・乳製品によって胃腸管に入るカルシウムが増えたからといって骨量の低下が防げるわけではない。 その証拠をいくつかお目にかけよう。 世界保健機関(WHO)も、カルシウムの摂取量の少ない国々の骨粗鬆症の発生率が高くないことを確認している。WHOは、骨粗鬆症の予防のために勧告されている食事性カルシウムが数々の健康障害を起こす可能性があることを指摘している。イギリス政府の栄養諮問委員会も「世界のいくつかの国で、カルシウム摂取量がイギリスの現行の勧告摂取量よりも少ないにもかかわらず、骨粗鬆症の発生が少ない」と述べて「カルシウム・パラドックス」の存在を認めている。放射性カルシウムを用いたカルシウムの吸収研究で、牛乳中のカルシウムはその18-36%しか吸収されないという結果が報告されている。この数値がカルシウム摂取量の勧告値を決めるのに用いられ、カルシウムの摂取基準を定めるのに用いられる吸収率は20-40%ということになっている。 栄養学の教科書には、その論理性を問うことなく、植物に存在する物質が腸内のカルシウムと結合するから、植物のカルシウムはごく僅かしか吸収されないと記述しているものがある。アメリカ応用栄養協会は次のように述べる。「カルシウムは、植物に存在するフィチン酸、蓚酸、繊維などによって吸収が阻害される。しかし、その影響は大きいものではない。ビーガンのカルシウム欠乏症は稀である。ビーガン集団の低カルシウム摂取が健康問題を起こすという証拠はほとんどない。」 責任ある医学のための医師委員会のニール・バーナード博士はその著書「命の食事(Food for Life)」において次のように総括している。「骨のカルシウムはホルモンによって厳密に制御されている。カルシウムを多く摂ったところで、ホルモンをだまして骨をつくらせることはできない。余分なレンガを建設作業員に運ばせたところで、設計で決まっているビルが大きくならないのと同じだ・・・ほとんどの人にとって重要なのはカルシウムを多く摂ることではなく、骨からカルシウムが失われるのを防ぐことなのに・・・」(6)。 これに対して、カルシウムの権威と称される人たちの意見は異なる。現在、成人に対するカルシウムの勧告値は一日あたり700mgであるが、アメリカのバージニアで行われた骨粗鬆症に関する専門委員会は、1990年に、女性に対する勧告値を1500mgに引き上げるべきだと結論している。またイギリスで行われたある骨粗鬆症に関するシンポジウムでは女性のカルシウム必要量について次のような数値(mg)を提案している。 正常成人 800 一日に1500mgのカルシウムは、ハード・チーズなら半ポンド(220g)、ヨーグルトなら4カートン、ミルクならコップ5杯に相当する! 多くの植物は多量のカルシウムを含んでいる。葉が濃緑色の野菜(たとえば、ケール、コラード、カブの葉 (turnip greens)、ブロッコリなど)はカルシウムを豊富に含んでいる(訳者:カルシウムは小松菜にも多い)。アメリカのヒーニーは、実験結果から、ケールなどの野菜からのカルシウムの吸収は牛乳からの吸収にほぼ等しいと述べている(7)。その他にカルシウムを豊富に含む野菜として、それぞれ含有量は異なるが、アーチチョーク、キャベツ、ニンジン、セロリ、セルリアック、ヒヨコマメ、白菜、エゾネギ、カラシナ、タンポポの若葉、ウイキョウ、サヤインゲン、ワサビ、ニラネギ、タマネギ、パセリ、パースニップ、ホウレンソウなどが挙げられる。カルシウムが豊富な果物は、バラの実、ラズベリー、キウイ、イチジク、クロスグリ、クロイチゴである。その他に良好なカルシウム源として、アーモンド、豆腐、きな粉、インゲン豆、オートミール、全粒小麦粉、ゴマ、ヒマワリの実、海草、乾燥果実などがある。大豆製品はカルシウムとマグネシウムを鉄とともに含み、その組み合わせはミルクよりずっと優れている。また、ヒヨコマメとゴマで作られるフムス(中東の料理)はカルシウムが豊富な優れた食品である。 骨粗鬆症の予防に重要なのは、カルシウムを摂ることよりも骨からカルシウムが失われるのを防ぐことである。 プラント・プログラムは「食事に関する7つの原則」と「ライフスタイルに関する5つの原則」から成り立っている。がんにならないために、このプログラムを採用しようと思ったら、自分のペースに合わせてあなたの生活に取り入れてほしい。一つずつ、心の準備ができたところで次の段階に進めばよい。 もしあなたがすでにがんになっていたら、このプログラムをすべてできるだけ早く実行することをお勧めする。始める前に一つだけ気をつけていただきたいことがある。私の経験が教えることであるが、抗がん作用をもつ優れた食品を食べても、有害な成分を含む食品を食べていては、意味がないということである。食事に関する第一原則で詳しく述べるが、有機的に生産された食材をできるだけ選ぶようにお勧めする。 文献 食事に関する原則その1 豆類を増やす すべての乳製品を避けることによって、がん細胞の分裂・増殖を促す強力なホルモン・カクテル(=乳・乳製品)にあなたの身体を曝す機会が劇的に減る。同時にあなたは残留抗生物質や農薬に身体を曝すことも少なくなる。乳製品を摂らないと、コレステロールや中性脂肪の摂取量も減る。乳がんの抗がん剤治療を受けているものは血栓症を起こし易い。たとえば、私が受けていたシクロホスファミド、メトトレキサート、フルオロウラシルによる治療は血栓症を5倍に増やすという報告がある(1)。 最近の研究によると、動物性食品を大豆製品に置き換えるとコレステロール濃度が20%下がるという。下がるのは「悪玉」といわれるLDLコレステロールである。しかし、典型的な洋風の食事に単に大豆製品を加えただけでは血漿コレステロールや血小板の凝集性に変化は起こらない(2)。効果があるのは動物性食品を減らして大豆製品を食べるようにしたときだけである。大豆製品はタモキシフェンと同じ機序であなたを乳がんから守る植物エストロジェン(イソフラボン)を含んでいるということを忘れないでほしい。大豆のイソフラボンの一つであるジェニスタインはいろいろな面で乳がん(前立腺がんも同様)を予防する。一つは上記の植物エストロジェン作用であり、もう一つは抗血管新生作用である。後者は血管新生を抑えることによってがんの成長を抑える作用をいう(3)。さらにジェニスタインは、フリーラジカル(がんの発生に関係の深い活性酸素など)を除去する抗酸化酵素の働きを強めることによって強力な抗がん作用を発揮する。膨大な実験結果が、大豆あるいは大豆製品に多くのがんの成長を抑える作用があることを示している(4)。 現在、大豆や大豆製品を買うのに一つだけ問題がある。大豆はしばしば、殺虫剤・除草剤に耐えるように遺伝子組み換えが行われている。大豆製品を購入するときは、ラベルをよく読んで有機栽培された大豆からつくられた製品を買うことである。 大豆はこの世に存在する最も栄養価の高い食品の一つである。中国では、大豆を「聖賢の贈り物」と呼ぶ。大豆が18世紀の終りに初めてもたらされたときの西洋はまさに産業革命の揺籃期にあった。ロンドンの王立植物園で栽培された大豆を見た起業家の頭を捉えたのはどうやって大豆を産業に活用するかということであった。最初の産業用使途は油を石けんの製造に用い、その油カスを家畜の飼料にすることであった。これはあまりにも東洋の大豆用途とはかけ離れたものであった。しかし、今やっと、西洋でも大豆の健康に対する驚異的な力に注目する人が増えてきた。 大豆は環境にも優しい農産物でもある。1エーカー(約4000平方メートル)の土地で西洋式農法を用いて穀物を栽培するものとする。収穫した穀物で肉牛を育てると、一人の人間が77日しか生きられない。この土地で麦を育てその麦をその人間が食べれば527日生き延びることができる。しかし、同じ土地で大豆を育てればその人間の6年分のタンパク質を優に賄うことができる!
この驚くべき力の源泉は、豆科の植物が空気中の窒素を固定する根粒バクテリアと共生していることによるものである。大豆のタンパク質含有量は収穫したままで40%、加工すると50%にもなる。大豆は人間が必要とするすべてのアミノ酸を含んでいる。だから、穀物と豆類を主体に生きるビーガンは、人間が必要とする20種類のアミノ酸をすべて摂ることができるのである。私がジャマイカで働いていたときに好んで食べた米とエンドウ豆からなる伝統的なジャマイカ料理はその典型である。実に美味しかった。 今ではどこのスーパーマーケットでも売られているから、ほとんどの人が豆乳になじみがあるだろう。豆乳は多彩な大豆製品のごく一部に過ぎない、試してみるべきものがいくつかある。 私が好きな大豆製品に豆腐がある。豆腐(大豆のチーズ)はタンパク質が非常に多いにもかかわらず、飽和脂肪酸が少なく、コレステロールを全く含んでいない。さらに安価である。豆腐はアジアの人々にとって4000年以上にわたる主要食品であった。豆腐は小さな子どもからお年寄りまですべての人にとって優れた食品である。身体によいものはたっぷり含まれているのに、わるいものはほとんど含まれていない。しかも消化されやすい。 豆腐、味噌、醤油は日本の三大大豆製品である。この三つが伝来し、独自に発展して、独特の日本料理が始まった。日本料理に精通している人たちは、豆腐や味噌・醤油について、まるで西洋人がチーズやワインについて語るように、その風味、味わい、香りを評価する。 私はときに豆腐を泡立て器で撹拌し、蜂蜜と果物を用いてプディング、アイスクリーム、ヨーグルトを作ることがある。脳と舌はしばらくして新しい味に慣れ、二度と乳製品を食べたいとは思わなくなる。私は今では乳製品の匂いを嗅いだだけで、吐き気を催すようになった。牛乳は乳牛の乳房の匂いがする! ここまで書いてくると、紅茶に砂糖を入れるのを止めたときのことを想い出す。それまでは砂糖を入れない紅茶なんて飲めたものではないと思っていた。ところが止めて一週間も経つと、砂糖入りの紅茶の味が気持ち悪くなった。砂糖に加えてミルクまで入った紅茶ときたら、これはもうゲーッとなる。 それでは、健康的だと言われていた乳酸菌入りのヨーグルトはどうなのか? 乳酸菌は免疫力を向上させ、感染を防ぎ、ビタミン生成を増やすといわれている。しかし、乳製品を止めることは乳酸菌を犠牲にすることを意味するものではない。カプセル入りの乳酸菌が簡単に入手できる。この乳酸菌を豆乳に入れれば簡単にヨーグルト様の大豆製品ができる。だから、乳酸菌の利益を損なうことなく乳製品のリスクを避けることができるのだ。さらに、プラント・プログラムに従えば、この乳酸菌を腸管内で生存・増殖させることができる。 覚えておいて欲しいのは、大豆はエストロジェンとプロジェステロン様の作用を示す植物ホルモンが含まれていて、更年期症状を抑える力があるということだ。私は、外出するときはいつも、大豆原料の粉ミルクや大豆ミルクセーキを容器に入れて持ち歩いている。これがないと2時間ぐらいでのぼせと顔面紅潮が現れる。更年期症状で悩む多くの人に豆乳を勧めたころ、数日で症状が消えてみなびっくりしていた。 乳がんのリスクを減らしたいと思っている人は、何をおいても乳製品を大豆製品に替えてほしい(前立腺がんについても同様である)。乳がんや前立腺がんになってしまった人は一刻も早く乳製品を大豆製品に切り替えてほしい。プラント・プログラムに従ってくれた乳がん患者で、従っているといいながら乳製品を食べていた人を除いて、乳がんの再発が起こった人はいない。私の友人に、乳がんで片方の乳房を切除し、その後もう一方の乳房に乳がんが発見されてこちらも切除し、今6ヵ月の抗がん剤治療を受けようとしている人がいる。私は彼女にプラント・プログラムを勧めていた。それなのにまた乳がんになった。効果がないのなら、人に勧めるのは止めようと思った。そこで「ほんとうに乳製品を止めているのか」と彼女に聞いた。「ええ、だけどチーズだけはどうしても止められなくて・・・。それにヨーグルトはいいんでしょ。みんな身体にいいというわよ」。 植物エストロジェンの多い食品を食べることで関心を集めていることが一つある。それは何人かの男性が私に言ったことだ。「大豆の植物エストロジェンを食べると男が女性化するのではないか」ということである。これに関しては膨大な研究が行われて、そのような証拠はないということになった(4)。大豆を数百年以上にわたって食べ続けてきたアジア諸国で、男性の性的ポテンツが落ちたとか生殖能力が衰えたなどということが問題になったことはない。事実はむしろ逆である。(訳者:日本人が牛乳を飲むようになって、日本で子どもがうまれなくなった。) 文献 食事に関する原則その2 野菜を増やす(1) しかし、もしあなたががんになって抗がん剤治療を受けていたら、クエン酸、シュウ酸などの酸を含む果物(オレンジ、レモン、グレープフルーツ、ライムなど)はあまり多く食べない方がよい。抗がん剤で免疫力が落ちている人には膀胱炎や関節炎を起こすことがあるからだ。このようなときには酸の少ないリンゴ、梨(これは消化管のがんー大腸がんーによい)、メロン、桃、杏(あんず)、バナナなどの果物がよい。 野菜についても、果物の場合と同じ理由で、あまりたくさんのホウレン草、ビート根、トマトを食べない方がよい。それ以外の野菜はできるだけたくさん食べることをお勧めする。野菜や果物に含まれている抗がん作用のある物質が次々に発見されている。アメリカ・ミネソタ大学のワッテンバーグが植物の抗がん作用に関する研究のパイオニアとして名高い。しかし、これはそんなに驚くべきことではない。植物にもがんのようなものができるかもしれないが、私は今まで植物のがんを見たことも聞いたこともない。ロンドン市内のある植物は100年以上も紫外線に曝されてきただけでなく、私たちがまき散らしてきた環境汚染物質を浴びてきた。それなのに植物はがんにならない。きっと植物には、発生する活性酸素やフリーラジカルなどを始末する物質が含まれているのだ。事実、進行した乳がんや卵巣がんに効果があるタキサン類がセイヨウイチイから抽出されている(ただし、セイヨウイチイは毒性があって食べることはできない)。 ほとんどの果物や野菜はベータ・カロテン(ビタミンAの前駆体)、リコピン(ニンジン、サフラン、赤・黄のピーマン、桃)などのカロテノイド、ビタミンC(ほとんどすべての果物と野菜に含まれている)、ビタミンEを含んでいる。これらはすべて抗酸化作用をもち、細胞の膜やDNAを傷害するフリーラジカルを除去してくれる。 時間が経つと、バターやクルミが嫌な匂いを発することがある。これは成分が酸化という化学的変化を起こしたためである。フリーラジカルという極めて反応性の高い物質のなせる変化だ。野菜や果物に含まれている抗酸化作用を示す物質はこの酸化を防ぐ。同じようにこの物質は、私たちの身体が古くなって錆びついていくのを防いでくれる。野菜や果物の赤、橙、黄色の色素はニンジンや桃のベータ・カロテン、トマト(とくにベビートマト)のリコペンは強力な抗酸化作用をもち、抗がん作用も示す。ニンニクや芽キャベツはとくに抗酸化物質が豊富である。 植物(とくに緑色野菜とか豆類やアルファルファの新芽)には葉酸が多い。葉酸は細胞分裂の際に遺伝子が正確に複製するために重要な役割を果たしている。この複製に誤りが起こると、この誤りががんの発生につながる。アメリカ人の食事に葉酸が欠けていることはよく知られている(2)。高齢者にみられる健康の衰えは葉酸の欠乏によるものだという説もある(3)。実際、西欧では、妊娠を望む女性はニ分脊椎などの奇形児の出産を防ぐために葉酸ピルの摂取が勧められている。サプリメントとして葉酸ピルを摂るのではなく、私たちは葉酸を多く含む食品を摂るべきだ。実際、以前にも述べたように、乳がんの化学療法のなかには葉酸欠乏を起こすものがある。私が抗がん剤治療を受けても頭髪が抜けることもなく速やかに回復したのは葉酸をたくさん含む新鮮なジュースを飲んだためだと信じている。私は治療中毎日、約250mlの緑色のリンゴ(Bramley apple)とウイキョウ(fennel)1:1のジュースと250mlのニンジンジュースを飲んだ。さらに、とくに葉酸の豊富なメロンをたくさん食べた。私と一緒に抗がん剤治療を受けていた人で、葉酸ピルを飲んだ人は髪の毛が抜けてしまったが、私の勧めでジュースを飲んだ人には髪の毛の抜けた人はいなかった。 この本の中で、乳がん予防の効果のある植物エストロジェンを大豆製品との関連で幾度となく述べてきた。植物エストロジェンはほとんどすべての果物、野菜、穀物に含まれている。大豆(soya)、ヒラマメ(lentils)、エンドウマメ(peas)、インゲンマメ(beans)はすべて空気中の窒素を固定してタンパク質をつくるマメ科の植物で、イソフラボンを豊富に含んでいる。西欧に比べて、アジア、地中海地方、ラテンアメリカなどでは大量のマメ科植物を消費する。典型的な西洋の食事では1日わずか3mgのイソフラボンしか摂れないが、東洋では30−100mgのイソフラボンを摂取している。 ムラサキツメクサ(red clover)は高濃度のクメスタン(coumestans)を含んでいる。ヒヨコマメ(chick peas:ギリシャのフムスの主原料)やヒラマメ(lentils)と同様、ムラサキツメクサは4種類の重要なイソフラボンをすべて含んでいる。ムラサキツメクサは、私が最近乳がんの予防に有効ということで取り入れた野菜であるが、どこの薬草店からも入手できる。ひまわりの種も発芽アルファルファも十分な植物エストロジェンを含んでいる。 植物プロゲステロンも乳がんの予防という点で重要である。天然の植物プロゲステロンが最も多く含まれている食品はナガイモとサツマイモである。大豆とウイキョウは植物エストロジェンと植物プロゲステロンの両方を含んでいる。亜麻仁(亜麻の種子)は抗酸化作用の強いリグナンを高濃度に含んでいる。女性が亜麻仁のリグナンを摂取すると黄体期が延長することと黄体期におけるプロゲステロン/エストロジェンの比が高くなることが確認されている(4)。アメリカ医薬品局、アメリカがん研究所、カナダ食品保護部門などは1日あたりテーブルスプーン1杯の亜麻仁を推奨している(ただし便が柔らかくなることに注意!)。 私は、大豆、カボチャ、ゴマ、ヒマワリ、アルファルファ、ヒラマメなどの種子(とくにこれらの発芽種子)を食べる。これら種子は、ビタミンCをはじめとするビタミンやミネラルが豊富で、タンパク質も多い。どう作るかについて以下に記す。 野菜と果物は、そのほかにも、がんの発生を防ぐ物質やその前駆物質を豊富に含んでいる。これらはインドール、イソチオシアネート、ジチオールチオン、有機硫黄成分(これらのあるものは天然の殺虫作用がある)などと呼ばれているものである。20年ほど前、疫学研究でジチオールチオンを含むアブラナ科の植物(白菜、ブロッコリ、芽キャベツ、カリフラワーなど)を食べている人にがんの発生が少ないことが示された。他のがん予防に有効な植物成分と同様に発がん性物質を解毒する肝臓の酵素を活性化することによって腫瘍の発生を抑制するといわれている。イソチオシアネートの1種でアブラナ科の植物の辛味成分であるスルフォラフェインもまた、肝臓の解毒酵素の活性化によってがん発生を抑制する。スルフォラフェインは化学発がん物質による乳腺腫瘍の発生を抑制することがラットを用いた実験で確かめられている、さらに、アブラナ科野菜(訳者:キャベツ、カリフラワー、ラデッシュ、ブロッコリー、クレソン、ケール、チンゲンサイ、芽キャベツ、からし菜、小松菜、京菜、すぐき菜、カイワレダイコン、大根葉、高菜、菜の花、野沢菜、白菜、わさびなど)に含まれているインドール-3-カルビノールはエストロジェンの代謝を促進するので、とくに乳がんの予防効果が大きいといわれている。最近の、アバディーンのロバート・ゴードン大学で行われたブタの大腸細胞のDNA障害を調べた研究では、生のブロッコリが大腸がんの予防になると推測されている。DNA障害を抑える物質はイソチオシアネートであるが、その前駆物質のグルコシノレートが調理によって分解されてしまうために、生のブロッコリにしか大腸がんの予防効果がないといわれている(5)。しかし、どの程度の加熱調理なら、予防作用は保たれているのか記載されていない。野菜はできるだけ生か軽い調理(蒸し野菜、油通し)で食べることが最良である。一方、肉と魚は完全に火を通すことが重要である。 ユリ科ネギ属のニンニク、タマネギ、エゾネギ(chives)、ニラ(leeks)などもがんの予防に有効な植物である。これらには放射線障害予防剤(システインなどの含硫アミノ酸)に使われる化学物質が含まれていて、診断用X線や治療用放射線の悪影響を弱める作用をもっている。ニンニクなどが放射線によって生ずるフリー・ラジカルを消去する強力な抗酸化作用を示す物質を含んでいるからである。ニンニクの主たる生物活性物質であるアリシン(allicin)は、ニンニクが潰されるときに生成する。アリシンは実験室の研究で乳腺と前立腺のがん細胞の増殖を抑制することが確認されている(6,7)。 アリシンに加えて、ニンニクは、がんの成長や動脈硬化を抑えるセレンやゲルマニウムなどの強力な抗酸化物質を高濃度に含んでいる。さらに、アメリカのペンシルバニア大学やテキサス大学の研究によると、潰したニンニクには他の二つの抗がん作用を示す物質 (ジアリルサルファイドとS-アリルシステイン)が含まれている。乳がんや前立腺がんに対するニンニクの予防効果はイスラエルのワイズマン科学研究所やニューヨークのメモリアル・スローン・ケタリングがんセンターの研究によっても確認されている。ニンニクは、天然の広範囲な抗菌作用のために、第一次世界大戦でも使われていた。多くの人がその強烈な臭いを心配する。みんなで食べれば気にする人はいない! もしあなたが重症のがんに侵されているときには、抗がん作用を発揮する十分量の野菜や果物が食べられないという心配がある。この問題に対処するのに最良の方法はせんいなどの固形物を濾しとったジュースを活用することである。重要な成分はこの透明なジュースにも十分含まれている。ある種の野菜の匂いと味が嫌いな場合には、鼻をつまんでジュースを「くすり」として飲むことだ。実際に「くすり」なのだから! 鼻をつまめば臭いも味も感じない。 ニンジンジュースは良いが、一日に200ml以下にとどめておいた方がよい。さもないと手のひらが黄色になる。私もお医者さんから「橙皮症」などという偉そうな診断を下されたことがある。キャベツジュースもあまりたくさん飲まない方がよい。キャベツには甲状腺腫誘発物質が含まれていて、あまりたくさんこのジュースを飲むと甲状腺が腫れてくる(煮たキャベツにはこの作用はない)。私が乳がんであったときは毎日、ブラムリーの青リンゴ、セロリ、ウイキョウ、少量のウォータークレス(オランダガラシの葉)をジュースにして飲んでいた。 野菜ジュースに加えて、新鮮な野菜サラダをたくさん食べることをお勧めする。必ずしも生で食べる必要はない。私は野菜を軽く蒸して食べることにしている(野菜の細胞が完全に死滅してしまうほどには加熱しないことと重炭酸ソーダ[重曹]を加えないことが必要)。あるいは野菜を軽く油通しをしてもよい(水を加えないで数分間炒める)。 私はまた野菜スープをたくさん食べることにしている。野菜を少量の油で柔らかくし、沸騰したお湯を加えて煮込む。これを味噌で味付けする。ときに、豆腐や海草を加える。食べる前にクレソンやレタスを添える。 野菜や果物をたくさん食べたときの悩みは1日に何回もトイレに行かなければならないことだ。実はそれが狙いなのだ。1週間に2-3回ではなく、1日に2-3回である! これは全く正常な排便である。1日に1回の排便なんて誰が決めたのか。便秘に悩むこともないし、痔疾から免れる。あなたの食事が良いか悪いかは糞便で判定できる。沈んでいないで浮いている便がよい。最初は「おなら」も出る。しかし、心配しないで欲しい。数週間もすると、あなたの身体が慣れて「おなら」に悩むことはなくなる。 もしあなたが、新鮮な野菜・果物ジュースの替わりに瓶詰めの濃縮還元ジュースで済まそうと考えているとしたら、それは考え違いだ。ご存知のように、切ったリンゴはたちまちのうちに茶色に変色し始める。酸化が起こっているのだ。あなたに必要なのは酸化していない緑色のジュースである。市販のジュースは、人工の抗酸化剤や保存料が加えられていて(考えて欲しい。ニンジンジュースが作られてからなぜ数週間後にも売られているのか?)、抗がん効果が低い。生野菜と新鮮野菜ジュースを勧めた大腸がん患者で、野菜から作られた錠剤を服んでいた人がいた。このような錠剤は意味がないことが介入疫学研究で証明されている。 疫学研究でベータ・カロテンの多い(たとえばニンジンのような野菜に多い)食事は肺がんの発生率を下げることが知られていた。そこで、ベータ・カロテンの錠剤で肺がんを予防できることを証明しようと介入研究が計画された。アメリカの国立がん研究所で行われた大掛かりな人体実験では、肺がんになり易いと思われている人たちの一方に毎日ベータ・カロテンをビタミンAあるいはビタミンEとの組み合わせた錠剤を服んでもらい、他方には偽薬(プラセボという。簡単に言えば、うどん粉を丸めて色も形も同じ錠剤にしたものである)を服んでもらって、その後の肺がん発生率を調べた。何が起こったか? ベータ・カロテンを服用した方に肺がんの発生が多かったのである(8)! 丸ごとの野菜や果物は、錠剤とは違って、基本的に有益な栄養素をセットとして含んでいる。丸ごとの野菜・果物の利点はそれぞれの成分の利点を足し算したものに優る。野菜・果物は一般に、そのほとんどが不明であるが、数百から数千の身体に有益な物質を含んでいる、天然の食品はその食品の成分そのものを分解する酵素をもっているのである。例えば、バナナは炭水化物の多い食品であるが、同時に炭水化物を分解するアミラーゼを含んでいる。ニンジン・ジュースはベータ・カロテンと恊働する多数の成分を含んでいる。新鮮な野菜ジュースと市販の野菜ジュースの違いは木材と紙の違いに似ている。食材はすべて、十分熟したものをできるだけ新鮮なうちに食べるのが原則である。1週間に1度食材をまとめて買うのではなく、季節ごとに登場する食材の必要量を毎日買っていた頃が懐かしい。 訳者:野菜の力を最大限に引き出すために 文献 有機農業に対する関心は1960年代の環境主義の台頭とともにヨーロッパとアメリカで高まった。有機土壌協会は1974年に、イギリスで最初の有機食品基準を制定した。この基準はEU条例2092/91が「有機」という表示を行うために満たすべき「食品の製造、加工、包装」の詳細を定める基礎となった。このEU条例は食品の製造・加工業者の監視基準とともに有機食品の製造・加工業者を認証するための詳細を定めている。アメリカでは「有機」の規制はそれぞれの州ごとに定められており、連邦政府の規定はない。アメリカ農務省は1998年に「有機」の統一基準を作ったが、「遺伝子組み換え」「下水汚泥の使用」「食品の放射線滅菌」の食品を「有機」と表示することを許容するものであった。現在、この基準は取り下げられ見直しが行われている。 有機食品を主張する人々はときどき、その主張に論理的・科学的根拠をもたない「中産階級の有機食品狂信者」と非難されることがある。私は、この非難が誤りであることを論考し、皆さんの「もっと高品質の有機食品を!」という主張がいかに大切であるかということについてお話したい。 農薬は、農産物の生長を妨げるすべての生物を駆除する化学物質で、病害虫を駆除する殺虫剤、雑草を枯死させる除草剤、細菌・カビなどを殺す防黴剤(殺菌剤)から、殺鼠剤・忌避剤まで多種多様なものを含んでいる。このような狭義の農薬に加えて、化学肥料、獣医が家畜に用いる薬剤を含めて農業に用いられているすべての化学物質が広義の農薬(アグロケミカル)である。有名な疫学者のドールとペトーの意見によると、人工農薬に起因するがんは全がんの高々2パーセント程度のものだろうということになっている(1)。2パーセントだって決して小さな数字ではない。しかし、この数字はある種の環境化学物質の内分泌撹乱作用が知られる前の推定値で、乳がんと前立腺がんに関しては過小評価している可能性が大きい。合成農薬を大まかに分類すると、有機塩素系製剤、有機リン系製剤、トリアジン系除草剤となる。 多くの農薬は有機物から作られる。ここに混乱と誤解が生じる原因がある。食物の「有機・オーガニック」はよい意味で使われるが、農薬の「有機物」という表現は全く反対の印象を与える別物である。「有機」は生命の対立概念である。 自然界は、軽いもので水素と酸素(この二つから水ができている)から重いもので鉛・金・ウランまで、92の元素から成り立っている。見える物も見えない物も、あなたの回りにあるものはすべてこれら92の元素の組み合わせから成っている。さらに驚くべきことに、すべての生き物は、単細胞生物からヒトのような複雑な生物にいたるまで、炭素というたった一つの元素を中心にしてできている。 炭素はとてつもない元素である、炭素は他のいろいろな元素と結合して地球上に存在する無数のものを作り上げている。そのうちの簡単な構造のもので、私たちが食物として利用しているのが糖類や澱粉で、炭水化物と呼ばれている。炭水化物という名称は、炭素が水化物(水素と酸素の割合が水と同じ2:1)と結合していることに由来する。炭水化物は、生命体では主としてエネルギー(あるいはその貯蔵物)として用いられている。脂肪も、タンパク質も、ビタミンも炭素を中心とした化学物質、すなわち有機物質である。このユニークな炭素という元素の振る舞いがすべての生命の基礎をなしている。このように生命と関係が深い、炭素・水素・酸素を中心とする物質を有機物という。 農薬は、この炭素という不思議な元素からなる有機化学物質で、有機体である私たち人間に危険をもたらす可能性のある物質である。農薬は、人間以外の生物(動物と植物)を殺すが人間には安全であるように構造設計されているというが、私たちの体内における生命の生化学的プロセスに重篤な影響をもたらす可能性を秘めている。 第二次世界大戦の終りごろから、機械を導入して単一農産物の生産量を高めるという農業の工業化が始まった。生産効率のよい穀物の大量生産のために大量の農薬を使って小さな生き物を殺し、家畜の病気の予防と治療に過剰な医薬品が使用された。第二次世界大戦中に導入されたDDTが農薬大量使用の端緒となり、他の有機塩素系殺虫剤ーディールドリン(dieldrin)やオルドリン(aldrin)ーが1940年代の終りごろから使われ始めた。環境科学者は長年にわたって、このような殺虫剤の野生動物に与える影響(たとえば鳥類の繁殖低下)に警告を発してきた。最近では内分泌撹乱作用という新概念がこれら化学物質の人間への影響に関心を集めるようになった。 DDTの使用は、アメリカでは1972年に禁止されたが、多くの開発途上国では未だに使われている。DDTと構造が似ているディールドリンやオルドリンのような有機塩素系殺虫剤もすでにほとんどの先進国では使われていない。しかし、DDTを含めた有機塩素系殺虫剤は、環境中に長く留まって、内分泌撹乱作用と発がん作用を発揮するという特徴がある。現在使われている農薬にも将来には使用禁止の証拠が見つかるものがあるだろう。 有機リン系農薬は最初、第二次世界大戦中にイギリス、フランス、ドイツ、アメリカで兵器の神経ガスとして開発された。神経刺激が神経接合部を通して伝わる際にアセチルコリンという神経伝達物質が使われる。この物質は役目を果たしたら速やかにアセチルコリンエステラーゼという酵素によってコリンと酢酸に加水分解されなければならない。有機リン系農薬はこのアセチルコリンエステラーゼの作用を阻害して,神経終末でのアセチルコリンの分解を阻害するために、アセチルコリンの過剰分泌症状が現れる。有機リン系農薬は乳腺ではなく神経に作用するが、最近の研究によると、そのうちのあるものには内分泌撹乱作用があるという。乳がんになったことおよびその治療に伴ううつ症状を最小にするためにも、有機リン系農薬に汚染された食物は避けるに越したことはない。 農薬の中には発がん性、催奇形性、発達毒性、生殖毒性を疑われているものある。マクマイケル(McMiichael)によると、1950年代に比べて世界の殺虫剤の使用量は30倍に増加し、化学肥料の使用は9倍に増えたという。食物の生産量は増えたが、広範な化学物質汚染を引き起こし、野生動物に危機をもたらして、生態系を混乱させた。1990年代半ばには、アメリカの農業で使われる殺虫剤の年間使用量は3億600万kgに達した。それよりも多量の9億kgの殺虫剤が農業以外の分野で、林業、造園、園芸、食物の保管・輸送、家庭用殺虫剤などとして毎年使われている。 食物中に残留する殺虫剤と防黴剤が人間の健康に関して最も重要な農薬である。収穫の少し前あるいは収穫後にも用いられるからである。除草剤の使用も輪作を不要にするほどに増えた。今や農薬の3分の2は除草剤である。s-トリアジン系のアトラジンは世界中で最も広く使われている除草剤である。今では、この除草剤と乳がんとの関係が疑われている。アトラジンがスプラーグ・ドーリー(SD)という系統のラットに乳がんを発生させたという報告がある(2)。WHOの附属機関である国際がん研究機関(IARC)のアトラジンに関する発がん性評価は「動物にがんを発生させるという証拠は限定的であるが、ヒトには発がん性の可能性がある」となっている。また、アトラジンはアメリカ環境保護庁(EPA)と世界野生生物基金(WWF)の環境内分泌撹乱物質のリストに載っている。アトラジンは世界のいくつかの国で使用禁止となっているが、アメリカとカナダではトウモロコシの栽培に広く使われている。このタイプの除草剤であるメトラブジンは大豆、サトウキビ、小麦の栽培に使われている。アトラジンもメトラブジンも雑草の光合成を阻害することがその作用機序である。 この化学物質の悪夢に対抗するには有機栽培された農産物を購入することしかない。今では多くの農家や協同組合が有機的に栽培した新鮮な農産物を提供している。1950年代に食物の生産や加工にあまりたくさんの化学物質を使うことに反対していた私の父は、殺虫剤が残っていない証拠だと云って私に虫食いのある果物や野菜を探すように教えてくれた。乳がんになる前に、私はすっかりこのアドバイスを忘れてしまっていた。 もし余裕があったら、有機的に栽培された農産物、叶わなければせめてニンジンとトマトだけでも有機栽培のものを選んで欲しい。もしお宅に野菜を育てる庭があったり、市民菜園が借りられたら、自分で野菜を有機栽培して欲しい。特にサラダに用いる野菜は生で食べることが多いし、調理の過程で農薬が分解することはないから、有機栽培の野菜にしよう。そうでなかったら、たとえばレタスやキャベツの外側の部分を捨てて、水でいつものように洗う前に、プラスチックではなくガラスビン入りの食用酢(安価な醸造酢)を薄めた液で洗ってからいつものように水洗いをしよう。これですべての農薬を完全に除去できるわけではないが、少なくとも表面に付着している農薬を減らすことができる。有機栽培された果物でなかったら、残念であるが、養分が最も多い皮を剥くことになる。皮に農薬が含まれているし、ときにワックスをかけている果物もあるからである。ワックスがかけてあることは、水洗いするときに水が表面をプラスチック製品の上を流れるかのように見えるからすぐわかる。ワックスがけはオレンジ、グレープフルーツ、レモン、流通量の多い市販リンゴなどに見られる。もちろん、通常皮を剥いて食べる柑橘類がワックスをかけられていてもどうということはないが、マーマレードを作るときのように果皮を使うときは問題だ。私は、ワックスをかけてあるようなリンゴは避けて、コックス(Cox)かブラムレー(Bramley)にこだわっている。一つ重要なことを注意しておきたい。有機農業では動物の排泄物が肥料として広く用いられるから、病原体が農作物に紛れていることがある。食前によく洗う必要がある。 訳者註:日本の有機農産物はどうなっているのか。日本経済新聞2007年10月21日の掲載記事の一部を紹介する。
有機は原則、無農薬だが。予想外の病害虫や病気の被害が大きい場合は第三者認証機関の評価を受けることを条件に、決められた種類の農薬や化学肥料を緊急的に使用することも可能だ。 文献 食事に関する原則その3 タンパク質について 乳がんの治療中に、植物だけからなる食事を8ヵ月ほど続けたら、私の気分が落ち込んでしまった。主治医は、この症状は乳がん治療に対する反応性のうつ症状だと考えていたようだが、私自身は多分亜鉛の欠乏によるものだろうと気付いていた。亜鉛は鉄に次ぐ人体に必須の金属である(1)。亜鉛は200以上の酵素の活性に関わっていて、その欠乏はうつ気分をもたらす。それだけでなく、亜鉛は創傷が治癒するときに必要だから、手術、放射線治療、抗がん剤治療を受けているときには十分量の亜鉛摂取が必要である。亜鉛の必要性は古代文明においても知られていた。アメリカ人医師がベトナム戦争で、火傷や損傷の治療に当たって亜鉛が極めて重要な役割を果たすことを見いだしたときに、これは大発見だと喜んだが、その治療法はすでに古代エジプトで使われていたことがピラミッドに記録されていた。 多くのフランスの医師や私が知っているイギリスの獣医師は一人残らず、亜鉛がいかに重要な金属かということを知っている。しかしイギリスで、亜鉛の重要性について医学教育を受けた医師に会ったことがない。男性の臓器で亜鉛濃度が最も高いのは前立腺である。亜鉛が前立腺の機能に重要な役割を果たしているからであろう。さらに亜鉛はIGF-1を制御することによって細胞分裂に関与している。アメリカ・イリノイ大学の研究者は、IGF-1と亜鉛イオンに深い関係があることを明らかにしている(2)。それによると、亜鉛はIGF-1の働きを抑える方向に働いているという。最近の研究によると、セレンも前立腺の機能に決定的な役割を果たしている。ある研究によると、一日に150マイクログラムのセレンを摂っている男性の前立腺機能障害は86マイクログラムの摂取者に比べて3分の1に過ぎないという。ある推定によるとイギリス男性の一日当たりのセレン摂取量は75マイクログラム以下であると云われている。ニンニクは良好なセレン源である。 私はサプリメントとして亜鉛の錠剤(亜鉛の摂リ過ぎは銅の吸収を妨げて他の健康障害を起こす。さらに亜鉛を摂リ過ぎると免疫系を抑制する)を服用したくなかった。その当時の私は、ビーガン(vegan)の食事をよく知らないのに、亜鉛とセレンが肉に含まれていることを知っていたために、自分の食事に肉を取り入れることにした。しかし、私が肉を食べることにしたのは、乳がんの症状がすべて消えてから6ヵ月経っていた頃である。私は有機飼育した家畜(抗生物質や生長促進剤を使わない伝統的な飼育)の肉を専門とする店からだけ肉を購入していた。ラム、ニワトリ、アヒルなどの若い肉か野ウサギ、鹿などの狩猟動物の肉を少し食べただけであった。狩猟動物は概して滋養に富み、濃厚飼料を与えられて運動をしない家畜肉に比べて脂肪が少ない。 私がアメリカ人だったら、有機飼育であることが完全に保証されていない限り、牛肉とブタ肉は決して食べないだろう。アメリカではすでに30年近くも、男性ホルモンと女性ホルモンからなる成長促進ホルモンのインプラント(埋め込み)が肉用ウシの飼育に広く多量に使われてきた。アメリカ・ネブラスカ大学の農業と自然資源に関する研究所によると、成長促進ホルモンのインプラントは生後45日未満の子牛と繁殖牛を除くすべての肉用牛に使用できる。このような成長促進ホルモンをインプラントされたウシの肉は処理されていないウシの肉に比べてIGF-1 の濃度が高い(3)。アメリカのブタ飼育には遺伝子組み換えで作られたブタ成長ホルモン(Porcine somatotrophin, PST)が使われているが、羊肉の生産に使われている証拠はない。 ボストンのタフツ大学医学部のゾンネンシャイン博士は、カナダの新聞に「アメリカ牛肉の残留ホルモンが女子の思春期の到来を早めている。初潮の早期発来が乳がんの増加に関係しているだろう」と述べている(4)。ブタ成長ホルモン(PST)は、調理の過程で分解されるからステロイド性ホルモン(女性ホルモンと男性ホルモン)より安全だと言われている。しかし、この説明はIGF-1濃度の上昇を考慮に入れていない。また、加熱不十分な調理ではPSTは分解されずに残る。ヨーロッパではこれらのホルモンはすべて家畜に使うことが禁止されているが、BBCのラジオ4によると、イギリスの養豚業者は「イギリスでは禁止されているのに、他のヨーロッパ諸国では下水汚泥を与えることが許されている」と苦情を申し立てている。ブタ肉は亜鉛が多く含まれているといっても、下水汚泥で育てられたブタなんて有機飼育からほど遠い。 肉は調理方法が重要である。私の母(現在90歳)の世代のイギリス女性は、時間をかけて肉を完全に調理するように教えられていた。乳がん再発を予防することも理由の一つであるが、その他の理由もあって、私は現在、いかなる状況でも調理不十分の生煮え・生焼けの肉は食べない。肉は熱が通りにくい。十分加熱されていなければ、肉のホルモン(天然のものであれ人工的なものであれ)は分解されない。たとえ、十分加熱されても、アメリカで飼育効率をあげるために使われているエストロジェンを始めとするステロイドホルモンは活性を失わない。一般に、内部は生なのに表面が焼け焦げるように調理された肉は健康によくない。焼け焦げの部分に発がん物質が発生するし(焼け焦げ肉と大腸がんの間に関係のあることが知られている)、生焼けの内部にはホルモンなどのがん促進物質が分解されずに残るからである。それから、最も大切なことは乳牛の肉を食べてはならないということだ。私は乳牛の肉のひき肉の入ったハンバーガーやソーセージなどの食品は決して食べない。「乳牛の肉は牛乳よりもたくさんのIGF-1を含んでいる」というEUの公式発表を想い出してほしい。 亜鉛などの必須金属を含む食品にタマゴがある。亜鉛はとくにタマゴの黄身(卵黄)に濃縮している。タマゴはさらに宇宙飛行士が服用する抗放射線ピルの主成分であるシステインという含硫アミノ酸をたくさん含んでいる。だから、タマゴは、X線検査を受けるときや放射線治療を受けているときには好個の食品である。その理由は、システインの中の硫黄がフリーラジカルを不活性にし、細胞を護るからであると考えられている(5)。私は、放射線治療を受けていたとき、有機飼育のメンドリが産んだ小さなタマゴを一日一つ食べていた。私は、今でもときどき有機のタマゴを食べるが一日に二つ以上食べることはない。その他に亜鉛を多く含む食品にカニ、巻貝、カキ(牡蠣)などがある。植物ではゴマの種子(中東料理に使われるタヒニと呼ばれるゴマのペーストは美味)、カボチャの種子、ヒマワリの種子、小麦の胚芽に多い。とりわけ、ビールの醸造に用いられるイースト(ビール酵母)は、亜鉛、セレン、クロム、ビタミンB群など多くの微量栄養素をたくさん含んでいるから、皮膚や神経を正常に保つのに役立つ食品である。 魚介類(新鮮な天然もの)は優れたタンパク質源である。とくに冷たい海に棲む鮭(サケ)や鯖(サバ)のような魚には善玉脂肪酸といわれるオメガ(ω)-3型脂肪酸が多い。沿岸水域は真水と海水の混じり合うところで栄養塩類が多く、魚介類が豊富である。しかし、残念なことに、イギリスをはじめ工業国の沿岸水域には、栄養塩類が集まるのと同じプロセスで汚染物質も集まっている。そんなわけで、産地が非汚染海域でなければ、いかに栄養的に優れていようとも、私は魚介類を食べる気にはなれない。生活をほとんど魚類に頼ってきたエスキモーの乳がん発生率は他の獣肉を食べている人たちより低い。魚にはヨウ素やヨウ素化合物が多い。ヨウ素は、亜鉛と同じく、細胞が誤りなく分裂するのに欠かすことのできない元素である(6)。 人間の身体の臓器で、甲状腺に次いでヨウ素が多いのは女性の乳房である。亜鉛が男性の前立腺に濃縮しているように、ヨウ素は乳腺が正常に機能するのに重要な役割を果たしているに違いない。実際、月経前緊張症で乳房痛を訴える多くの友人は私が勧めたアイスランドの昆布(ケルプの錠剤)によって痛みを克服している。さらに、ラットを用いた実験で、ヨウ素は乳腺の正常な発育に必須で、欠乏すると乳腺に異形成の起こることが確認されている(7)。 ヨウ素は奇妙に振る舞う元素である。ヨウ素は保存性元素と呼ばれるものの一つで、溶液中に存在する。したがって、地球では最終的に海洋に濃縮して存在するから、ヨウ素は海産物中に多い。ヨウ素は作物の栽培中に失われるし、加工あるいは調理中にも失われる(中国では魚を調理するときに調理容器を密閉し、煮汁をスープとして使う習慣がある)。牛乳を殺菌のために加熱するとヨウ素の20%が失われる。食物の中には甲状腺腫誘発物質(たとえば、キャベツや菜種など)があってヨウ素の必要量が増す。菜種油やカノーラ油の原料となるアブラナの種子(菜種)は甲状腺腫誘発物質を含んでいるので、私はアブラナを食べないしその油を使わない。食用油はいろいろな油を混ぜることがあるから、成分の明らかではない油は菜種油やカノーラ油を含んでいることがあるから私は使わない。 私は十分量のヨウ素を摂取するためにケルプ錠を服用している。海藻はすべて高濃度のヨウ素を含んでいる(訳者:海草を比較的多く食べる日本人はヨウ素欠乏を心配する必要はない)。ただし、汚染された海域で採取された海草は汚染物質を含んでいるし、原子力発電所の排水が流れ込む海域では放射能汚染の心配もある。私は海藻ではアイスランドのケルプ(kelp)だけを食べることにしている。アイスランドは人口が少なく、地熱だけをエネルギーとして使っているから、海洋汚染が少ないと思うからである。20世紀の始めごろまで、魚、海藻、廃棄汚物は農産物栽培の天然肥料として使われていたが、現在ではほとんどがリン鉱石などの無機肥料に取って代られた。リン鉱石を原料とするリン肥料は多少ヨウ素を含んでいるが、放射能活性のあるウランを含んでいたり、採掘地によっては高濃度のカドミウムを含んでいる場合もある。 工業先進国の農地には有機の腐植土が少ない。農業も工業化されているからである。したがって、雨水から供給されるヨウ素を効率的にため込むことができない。だから、先進国の農産物には一般にこの重要な元素であるヨウ素が少ない。だから、海藻類などから天然のヨウ素を摂ることが必要となる。アイスランドのケルプを食べるようになってから、私の肌の状態は非常によくなった。たとえ短期間でもケルプがないと、肌が荒れ始める。肌荒れは、肘、膝、臀部から始まって全身に広がるが、ケルプを食べるとたちまちおさまる。海藻もまた放射能に防御的に働く。海藻から採られる粘稠性のアルギン酸塩(アルジネート)は放射能に対する標準的な防御剤である。したがって、ケルプも他の海藻も診断用X線や放射線治療の影響から身体を護るのに役立つ。ビーガンがゼラチンの代りに用いている寒天もヨウ素源となりうる。その他に私がたまに食べる海草は荒布(アラメ)、鹿尾菜(ヒジキ)、ダルス(アイスランド・スコットランドで食用にされる紅藻類)、若布(ワカメ)などである。日本でおにぎりを包んだり、スシを巻いたりする海苔(ノリ)も好個のヨウ素源である。 ヨウ素を摂ると、おまけに脳の働きがよくなる。ヨウ素欠乏は知能遅滞の最も一般的な原因であり、幼児では脳の発達障害が起こる(8)。事実、治療法のないクレチン病(乳児期甲状腺機能低下症で著しい精神遅滞がみられる)は妊娠中の母親のヨウ素欠乏によって起こる。 穀類は良好なタンパク質源であるが、これについては「食事に関する原則その6」で述べる。 他のタンパク質源として堅果類(ナッツ)もあげておこう。私はたくさんのナッツを食べる。しかし予め殻の剥かれたナッツは酸敗が起こり易いので避けている。さらに、ピーナッツなどの地下豆はアフラトキシンという発がん物質を産生する微生物(カビ)で汚染されていることがあるので食べないことにしている。また、ブラジルナッツも放射性物質ラジウム226を高濃度に含んでいることが多いから、私は食べない。同僚がブラジルナッツの放射能のことを話したとき、それまでこのナッツを食べていた私は信じなかった。しかし、ブラジルナッツを一晩、放射能検出器に置いてその放射能を確認してからは食べないことにした。 乳がんになりたくないという人や罹患した乳がんから回復した人(私もその一人)は動物性食品の摂取を総摂取カロリーの15%以下に止めることをお勧めする。 以下に乳がん・前立腺がん予防のための食事に関する要点をまとめる。 文献 食事に関する原則その4 油脂について 室温で固まっているのが脂肪で、液状になっているのが油である。しかしながら、科学者は、それが液体(油)であれ固体(脂肪)であれ、両者を脂肪という言葉で一括りにすることが多い。化学の言葉でいうと、脂肪はすべて、3分子の脂肪酸と1分子のグリセロールと呼ばれるアルコールとが結合したものである。脂肪はトリグリセライドという言葉でも表される。トリ(三つ)の脂肪酸とグリセロールの結合物という意味である。 脂肪酸は、簡単に云うと。脂肪を構成している酸ということである。主要な脂肪酸にパルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノレイン酸という4つの脂肪酸がある。脂肪の1分子はこれら四つの脂肪酸のうちの三つを含んでいるということを覚えておいて欲しい。みなさんは過去に飽和脂肪、不飽和脂肪あるいは多価不飽和脂肪という言葉をいやというほどお聞きになっていると思う。上にあげた四つの脂肪酸のうちのどれと結合しているかによって「飽和」「不飽和」あるいは「多価不飽和」が決まる。これについて説明しよう。 それぞれの脂肪酸は炭素原子の長いしっぽ(炭素鎖)を持っている。炭素原子はだいたい15から17のものが多い。それぞれの炭素原子は、他の原子と結合できる4本の手を持っている。炭素原子どうしが、すべて互いに1本の手で結び合っている(単結合)場合を「飽和」(水素で飽和しているの意)、2本の手で結び合っている(二重結合)場合を「不飽和」(水素が結合する余地がある)という。すべての炭素原子が単結合している脂肪酸を飽和脂肪酸、二重結合している部分が一個だけの脂肪酸を単価不飽和脂肪酸、二重結合している部分が二個以上ある脂肪酸を多価不飽和脂肪酸という。二重結合のある脂肪酸は脂肪を融けやすくする。したがって、常温で液体である油は不飽和脂肪酸からなることが多いが、動物性脂肪は主として飽和脂肪酸からなり室温では固体であることが多い。自然界では、脂肪はエネルギーの貯蔵庫の役割を果たすと同時に絶縁体として熱が失われるのを防いでいる。 飽和脂肪酸 単価不飽和脂肪酸 多価不飽和脂肪酸 必須脂肪酸 ガンマ-リノレイン酸(GLA)もすぐれたオメガ-3型脂肪酸である。動物の肝臓やマツヨイグサに多く含まれている。肝油を服用するときはくれぐれも有機飼育された動物の肝臓から採られたものにして欲しい。ゼラチン・カプセルに入ったGLAには屍体から採取されたものもあるから注意した方がよい。 一般の西洋風の食事でみると、オメガ-6型脂肪酸の摂取量がオメガ-3型脂肪酸の20倍も多い(1)。現代の食生活では、オメガ-6型脂肪酸は十分であるが、オメガ-3型脂肪酸は不足しがちである。私は魚をたくさん食べるが、抗生物質や他の汚染物質が残留している可能性の大きい養殖魚は避けている。また、有機塩素系殺虫剤やPCBの多い魚油を単独で摂取することはない。さらに、魚にはビタミンDが多い。ビタミンDは骨を健康に保つのに必要であることは古くから知られているが、ロンドンのセント・ジョージ医科大学とハーバード大学の研究によると乳がんの予防にもなるという(2)。ビタミンAとDによる乳がんリスクの軽減はIGF-1の血中濃度が下がることによるものだという説がある(3)。 私は今では、どのようなものであっても、乳製品を口にすることは一切ない。油は生(サラダ・ドレッシング)であれ加熱調理であれ一番搾りのエクストラ・バージンのオリーブオイルに頼っている。このオリーブ油は80%以上の単価不飽和脂肪酸を含み、酸化に強い。したがって加熱調理に耐える。オリーブ油を用いるときはできるだけ低温でゆっくり調理することだ。油は傷まないし食品に香りがうつる。しかし私は、一度加熱したオリーブ油をもう一度用いることはない。また、オリーブ油をベースにしたというマーガリンを食べることはない。乳製品のバターを含んでいるからだ。 私が食べている唯一の油は有機栽培されたオリーブの実あるいは野菜の種子を低温圧搾で抽出した油である。油を搾るにはいくつかの方法がある。 私は、低温圧搾で作られた油を使うことをお勧めする。冷暗所で保管すれば6ヵ月は新鮮さが保たれる。 油はすべて、酸化を防止するために、栓付きの暗褐色のガラスビンで保管すべきである。私はプラスチック・ボトル入りの油は決して使わない。プラスチックに含まれている有害な化学物質の多くは油に溶け易いからである。できるだけ加工されていない食物を丸ごと食べるという私の信条に照らして、私は油もできるだけ食物として摂ることにしている。たとえば、魚油は魚を食べることによって、亜麻仁油は亜麻仁を食べることによって摂るのである。この方法の利点は亜麻仁を例にするとよくわかる。イングラムらによると、抗がん作用を示すリグナンの前駆体が含まれているのは亜麻仁油ではなく亜麻仁そのものである(4)。亜麻仁は乳がんの予防に極めて有効である。しかもこの種子は便秘を防いで痔核を予防し、女性に起こりやすい静脈瘤をも予防する(5)。亜麻仁に含まれているリグナン前駆体がラットの乳がんの発生を防ぐことが確かめられている(6)、亜麻仁が豊富に含んでいるリグナンの前駆体は、腸内細菌の作用で極めて強力な乳がんの成長抑制物質に変わる。さらに、亜麻仁は大腸がんの予防にも有効なことが示されている。リグナンには抗酸化作用、抗菌作用、抗がん作用がある。私が食べる、丸ごとの種子によらない液体の油は低温圧搾で作られたエクストラ・バージンのオリーブ油だけである。私は、バターはもちろん、マーガリンも口にしない。 多くの地中海レストランではパンにつけて食べるようにハーブで香りをつけたエクストラ・バージンのオリーブ油が供される。これはバターよりずっと健康的でかつ美味しい。私もディナー・パーティーを催すときは同じようにしている。客は香りをつけたオリーブ油にパンを浸して楽しみながら味わう。いままで、誰一人としてバターが欲しいと云った客はいない。これを味わうと多くの人がこのアイデアを採用するようになった。知り合いのスペイン人、イタリア人、ギリシャ人は魚の調理にオリーブ油を使い、サンドイッチにもバターやマーガリンではなくオリーブ油を使う。このサンドイッチはイギリス人が日頃食べているものに比べて健康的であるばかりではなく、ずっとずっと美味しいということを繰り返しお伝えしておく。 私は菜種油やカノーラ油を避けている。これらの油が動物実験で毒性の証明されているエルカ酸を含んでいるからである。カノーラ(セイヨウアブラナの1種)はカナダに古くからあったアブラナを品種改良した植物で、搾られた油は少量ではあるがエルカ酸を含んでいる(菜種油にはもっと多い)。カノーラ油はアメリカ農務省も食用を承認している食用油で、カナダで最も多量に消費されている植物油である (7)。 私はどんな油が使われているが明らかにされていない油を使った加工食品を避けることにしている。その食品がカノーラ油、パーム油、あるいはココナッツ油を含んでいるかも知れないからである。さらに、多価不飽和脂肪酸を高濃度に含んでいると宣伝するものを含め、すべてのマーガリンを避けている。マーガリンは不飽和脂肪酸に水素添加(ニッケル触媒の存在下で圧力をかけて水素ガスを不飽和脂肪酸に通じる)を行ってつくる。この操作を行う過程でトランス脂肪酸(TFA)が生じる(部分的水素添加では多価不飽和脂肪酸も残るがトランス脂肪酸が多くなる)。西洋風の食事にはトランス脂肪酸が多い。トランス脂肪酸は必須脂肪酸の代謝を狂わすために(8)、健康障害を起こす可能性があり、乳がんの発生にも関係しているという(9)。トランス脂肪酸は構造も機能も飽和脂肪酸に似ているために、WHOは生産者に水素添加の際に生ずるトランス脂肪酸を減らすように勧告している。 食用油についてまとめると、 文献 食事に関する原則その5 調味料と香辛料について 塩を加えないで調理すると、食物は本来の微妙な風味が引きだされてずっと美味しくなることに気づくだろう。乳がんの少なかった日本人は醤油や味噌を使うために塩の摂取量が多かった。だから、塩を少なくすることが乳がんの予防に必須なことだとは考えられない。しかし、塩分摂取量を減らすことは一般的に健康にとってよいことだ。だから、私はできる限り食塩と精製糖の摂取を減らすことを勧めている(料理に砂糖をたくさん使えば、同時にたくさんの砂糖を使うことになる)。 私は我が家の庭の片隅でパセリ、タイム、チャイブ(エゾネギ)、マヨラナ、ローズマリー、ミントなどの香味野菜を育てているが、他の香味料はスーパーマーケットなどで買っている。香味料を上手に使うと食味が一段とよくなる。私は、乳がんの治療中は香辛料(スパイス)を使わなかった。しかし、中国人、とくに四川省と湖南省の住民は香辛料(唐辛子)をたくさん使った料理を好んで食べる。また、韓国やタイでも大量の唐辛子を消費する。しかし、これらの国々では乳がんも前立腺がんも少ない。したがって、がんの代替療法に関する多くの書物は香辛料を避けるように勧めているが、私は香辛料を避けることが乳がんや前立腺がんの予防にとって本質的なことだとは思わない。 クロッカスから造られた本物のサフランは抗フリーラジカル作用を示すカロテノイドを含んでいるが、私は、東洋のレストランで供される極端に赤あるいは黄色に色付けられた料理は食べないことにしている。 私は、ワインあるいはリンゴ酒から有機的に造られたビネガー(食用酢)をよく使う。エクストラバージン・オリーブオイルと混ぜると格好のサラダ・ドレッシングになる。しかし、市販のマヨネーズ、サラダクリーム、どろりとしたドレッシングは決して食べない。 精白糖(白砂糖)は、グルコース(ブドウ糖)と果糖からなるニ糖類で化学物質のようなもので、炭水化物以外の栄養素を全く含んでいない。私は白砂糖を使わない。精製していない砂糖(黒砂糖)は甘みをつけるのに適している。しかし、ブラウン・シュガー(赤砂糖)として市販されているものには精白砂糖をカラメルで着色したものがあるから注意が必要である。汚染されていない花から採られた蜂蜜も使う。日本人や中国人は伝統的に砂糖などの甘味料を使うという習慣はなかった。カボチャやサツマイモから甘みを得ていた。 食事に関する原則その6 穀物 私のお気に入りの間食はフィッシュ&チップス(魚のフライとポテトフライ)で、乳がんが消えてからは少なくとも週に1回は食べている。家の近所の店では、私のために、フライの衣(ころも)に牛乳を使わずに魚のフライを作ってくれる。他の店のものを食べるときはフライの衣を取り除いて食べる。最近、サリーの大通りを歩いていたときに、2軒のファスト・フード店の宣伝文句を見て驚いた。一つは「偉大なアメリカを経験できる」というハンバーガー(白パンで乳牛の肉から作ったバーガーを挟んだもの)でもう一つは「偉大な英国を経験できる」というフィッシュ&チップスであった。私がファスト・フードを食べるとすれば、味の点からも健康への配慮という点からも、間違いなく「偉大な英国」を選ぶ。 私はいろいろな種類の乾燥果実をたくさん食べる。プルーンは抗がん作用のある物質を含んでいるし、イチジクは優れたカルシウム源である。カボチャの種、ゴマ(ともに亜鉛が多い)、ヒマワリの種は栄養豊富で格好のおやつとなる。昔の中国では伝統的に野菜の種子や生あるいは乾燥した果物をおやつとして子どもに与えていたが、西洋では甘いキャンディー、ケーキ、ビスケットを子どもに与えている。最近まで中国の子どもの歯が丈夫だったのは、この風習のおかげだろう。 西洋で軽食として食べられているサンドイッチやビスケットはコムギ粉が主体である。コムギ粉から作られる食品はがんの食事療法の推進者には評判が悪い。しかし、私は、グルテンに対してアレルギー反応を示す人がいることを知っているが、コムギのタンパク質であるグルテンを基本的に悪いものだとする考えは理解できない。大多数の開発途上国の人々は何らかの穀物を主食としている。これらの人々のほとんどは一生を通じて豊かな国の人たちの病気(乳がんや前立腺がんなど)とは無縁である。コムギが悪いと言われるのは、コムギが定地農業になり、同じ土地でコムギを生産するようになったからだという説がある。 コムギはもともと連作できない農作物である。かつての労働集約型農業では小麦の生産量がわずかであったから堆肥によって土壌改良もできたが、現在の資本集約型農業における大量生産では、大量の化学肥料を使わなければ生産量を維持できない。そのため、現在のコムギからは重要な栄養素が失われてしまったというのだ。そのうえ、コメは昔からそのままの形で食べられているが(粒食)、コムギは加工してコムギ粉として食べられる(粉食)から、その過程(粉砕、フスマの除去、成型)で重要な栄養素が失われてしまう。「豊かな国々の病気」がコムギの定地農法とともに増えたのは多分、生産の過剰と土壌の劣化によってコムギの質が悪化したためばかりでなく、パン食に必然的に伴うことになった乳・乳製品の消費が原因であろう。 市販の精白パンやパスタなどのコムギ粉食品のために小麦から精白コムギ粉を作る過程で、多くのタンパク質、ビタミン、ミネラルが失われる(この栄養豊富な部分は家畜に与えられる)。これを補うために、カルシウム・鉄・ビタミンなどがコムギ粉に添加されている。ビタミン類を加えているにもかかわらず、精白コムギ粉はしばしばビタミンB6、ビタミンB5、モリブデンが不足し、ビタミンE・コバルト・亜鉛のほとんどが失われ、クロムやセレンも少なくなってしまう。さらに、コムギ粉の漂白、およびコムギ粉改良剤として加えられる臭素酸カリウム*によって、コムギ粉の状態は一層悪くなっている。私は、市販のパンの成分表示を細かくチェックして、化学物質が使用されていないものだけを購入することにしている。もし時間があれば、世間に広く流通しているパン焼き器を用いて、有機のコムギ粉でパンを作るのだが、現時点では忙し過ぎてパンを焼く時間がない! 現在の精白パンにはいろいろな問題がある(訳者:最大の問題点はパンの多くが製造過程でバター・マーガリン・牛乳などが加えられていること)。私は有機栽培のコムギ粉を石臼で挽いた全粒粉から作られたブラウンブレッドだけを食べている。その他に有機栽培の穀物(玄米を含む)から作ったポリッジ(かゆ)やオートケーキ、全粒粉のパスタなども食べる。これらはすべて、有機農産物の専門店だけでなく、最近ではスーパーマーケットで入手可能である。最近出版された乳がんを防ぐ食事に関する書物ではムースリ(訳者:つぶしたオートムギに刻んだ乾燥果物やナッツなどを混ぜたシリアル;一般に朝食用に牛乳などをかけて食べる)をよくない食べ物だとしている。市販のムースリは白砂糖や乳製品が使われているが、穀物が有機栽培されたものであり、牛乳やヨーグルトなどと一緒に食べなければ、ムースリそのものに悪いところはない。ムースリの材料として玄米やオート麦を使い、柔らかくするのに牛乳ではなく、豆乳や新鮮な果物ジュースを使うことをお勧めする。 食物繊維は消化管の運動を活発にすると言われる。一部の代替療法の推進者は、食物繊維は余分なエストロジェンのような女性ホルモンの排泄にも一役買うと言っている。しかし、多くの食物繊維、中でも穀物由来の繊維の多い食事は、消化管内で亜鉛と結合するフィチン酸と呼ばれる物質が多く、亜鉛の吸収を妨げるという人もいる。繊維の多い穀物を中心とする食事を長期にわたって続けている人では十分量の亜鉛や他のミネラルを吸収するような適応機構が働くから心配ないが、フィチン酸の多い穀物中心の食生活を実行している人は亜鉛の多い食品を摂取するように心掛けた方がよいだろう。面白いことに、亜麻仁の繊維は亜鉛と結合しないという(1)。 文献 食事に関する原則その7 飲みものについて 1990年代の始めに、英国ブルネル大学のサムプター教授が、下水処理施設からの排水が流れこむ幾つかの川で、オスの魚の多く(ときに100%)が、大きくなった精巣に卵を抱えてメス化していると報告した。原因として、プラスチックの軟化剤として使われているフタレートが疑われたり、洗剤やプラスチックの分解産物であるノニル・フェノールが名指しされたり、経口避妊薬あるいはホルモン補充療法に用いられている女性ホルモンを含む女性の尿が下水に入ってその残留物が河川に流れ込んだのではないかと言われたりした。再処理された飲料水はベンゼンなどの発がん性化学物質、農薬の殺虫剤、消毒に使われる塩素の副生成物であるトリハロメタン(THM)やハロ酢酸(HAA)など多くの有害化学物質を含んでいる。アメリカでは消毒副生成物(THMやHAA)に対して非常に厳しい基準が採用されているという。これらの理由から、私は上水道の給水栓からの水を直接飲まないことにしている。けれど、ミネラルウオーターがよいとも思わない。とくに、プラスチックボトル入りのミネラルウオーターはお勧めできない。さらに、ある種のボトル入りの水は、もしそれが水道水であれば違法であるほどに高濃度の放射能や硝酸類を含んでいることがある。 私は水道水を活性炭で濾過してガラス製のジョッキにためて使う。すべての部品をガラスで作った濾過器を見つけることはできなかった。プラスチック製であっても固い材質なら、濾過する毎によく洗えば軟質のプラスチックと違ってそれほど高濃度のフタレート類が溶け出ることはないだろう。飲用する前に、有害な化学物質を更に減らすためと水処理で生き残った微生物を完全に死滅させるために、必ず濾過水を沸騰して用いている。これらの残留汚染は水道水だけでなく、浅いところから取水されてボトル詰めされたものにもありうる。さらに、植物は大きな分子でかつ疎水性の汚染化学物質をその表面に吸着するから、私は水に茶の葉(緑茶)あるいはハーブティーを加えてから飲むことにしている。 抗がん剤治療を受けているときは身体の免疫力が万全ではない(専門的な用語で言うと、正常な免疫応答をする能力を失って免疫無防備状態にある)から、飲み水を沸騰することはとくに重要である。過去15年ほどの間に、汚染された水系に生存するクリプトスポリジウムという原虫が免疫不全の人々に重篤で持続性の下痢、嘔吐、脱水状態を起こすことが明らかになった(健康な人でも嘔吐・下痢などの胃腸炎の起こることがあるが、短期間で自然に軽快する)。飲み水を沸騰することでこの原虫は死滅する。 給水系の汚染によるクリプトスポリジウム感染症の最初の勃発(集団発生)はアメリカとイギリスで起こった。アメリカでは1984年にテキサスで、イギリスでは1980年代の終りにエアシャーとオックスフォードシャーで起こった。1993年にはウィスコンシン州ミルウオーキーの水系汚染で40万人以上が感染し、数人が死亡した。感染予防は飲み水(ボトル詰めを含めて)の沸騰、頻回の完全な手洗いと寝具類の交換である。感染はペット、家畜、野生動物にも及ぶことが知られている。 私はコーヒーを飲まないが、緑茶を大量に飲む(もちろんミルク抜きで)。緑茶の抽出物には動物実験でがんの予防効果があることが知られている(最近では紅茶にも同様の効果があるという人もいるが、私にとって紅茶をミルク抜きで飲むことは難しい)。緑茶の抗がん作用は、緑茶の浸出液の固形成分のほとんどを占めるカテキンという抗酸化作用のあるポリフェノールによってもたらされる。 私のお茶の飲み方は中国人の飲み方と全く同じである。中国で初めて仕事をしたときのことだ。タクシーに乗るたびに、タクシー運転手の横に底で奇妙なものが揺れ動いている蓋つきのビンが置かれているのを「一体何だろう」と不思議に思ったものだ。緑茶だった! 中国人や日本人や韓国人が飲む緑茶は通常の紅茶よりも農薬の使用が少ない。中国では、緑茶は消化を助け、血の巡りを良くし、体温調節に役立つと評価されている。紅茶はコーヒーに比べると2倍ものカフェインを含んでいるし。紅茶に含まれているタンニンは鉄の吸収を妨げる。また、紅茶の浸出液(これが紅茶)はカテキンを酸化してその効果を消してしまう(1)。 私は緑茶しか飲まない。他に飲むものがないときは、薄い紅茶をミルクと砂糖なしで飲むことはある。ハーブティーも飲む。ペパーミントかカモミールに蜂蜜を入れて飲むことが多い。ときにはフルーツティーを飲むこともある。しかし、フルーツティーは酸度が高く、たくさん飲むと膀胱炎を起こすことがあるので稀に飲むだけである。香りや甘みを出すために化学物質を加えているものもあるから避けるように注意している。 アルコールの飲み過ぎは長いこと乳がんの危険因子の一つに数えられてきた。最近のハーバード大学公衆衛生学がまとめた研究によると、アルコールをたくさん飲むほど乳がんリスクが高くなり、純エタノールに換算して一日当たり30グラム(訳者:日本酒で1合、ビールで大ビン1本)飲むと、リスクが有意に高くなるという(2)。アルコールで乳がんが増えるのは、アルコールが血液中の女性ホルモンやIGF-1の濃度を増加させるからだという説が有力である。私は、乳がんになる前でもほんの少ししかアルコールを飲まなかったが、乳がんの治療中は一滴も飲まなかった。今は少し飲むが、飲むのはビタミン類の多い麦芽を用いて作られた本物のビールに限っている。ビールを飲むと気持ちが柔らぎ、ぐっすり眠れる。私はワインを飲まない。ワインは酸性度が強く、私が飲むと膀胱炎や関節炎の起こることがあるからである。ワインを飲むなら有機栽培されたブドウを醸造したワインにすることをお勧めする。ワインの醸造で有名な地域では少なくとも一カ所ぐらいは「有機」を売りものにしているところがあるだろうし、最近ではスーパーマーケットでも、大通りの酒屋でも比較的安価な値段で「有機」ワインを購入できる。 私は中国で、男性が醸造酒(黄酒:紹興酒など)や蒸留酒(白酒:茅台酒など)を飲むところよく見た。しかし、アルコールを飲む中国の女性はほとんど見たことがない。中国には前立腺がんが非常に少ないから、適度の飲酒が乳がんや前立腺がんの主たる原因になるなどということは私には信じられない。しかし、あなたが乳がんや前立腺がんの発生に大きな役割を果たすホルモンや化学物質を含む動物性食品を食べる人であるなら、エストロジェンや遊離のIGF-1を増やすアルコールを飲むのは問題だろう。 活動性の乳がんに罹っていたときは、私は紅茶、コーヒー、アルコールを一切口にしなかった。乳がん治療中にこれらの飲料を避けてよかったことは、カフェインを摂らなかったので悩みが減ったこと、アルコールを飲まなかったので憂鬱な気分が減ったことだと思っている。乳がんの治療仲間で、不安や心配をこれらの飲料で紛らわそうとした人にはかえって落ち込む人が多かった。 コーヒーや紅茶を好む人は、炒った穀物を煎じたお茶(訳者:麦茶、玄米茶、蕎麦茶など)に変えていくのも一つの方法である。一番重要なことは飲み物に牛乳を入れないことだ。ミルク味を懐かしむ人は牛乳を豆乳に変えることが肝要である。 文献 一目でわかる「プラント・プログラム」の食物に関するまとめ 2.私が一日一回に限り食べたり飲んだりしているもの(ただし、乳がん治療中は食べなかった) 3.ときどき愉しみのために食べるもの(一週間に一度程度。ただし、乳がん治療中は食べなかった) 4.毎日たくさん食べたり飲んだりするもの おわり |