『乳がんと牛乳−がん細胞はなぜ消えたのか』
ジェイン・プラント 著
     佐藤章夫 訳

径(こみち)書房 2008年10月3日発行

本の紹介

プラント教授は、乳製品を完全に断ちきることによって、再発・転移をくり返す乳がんを克服しました。その闘病生活を描いた書物が2000年に出版されたとき、医師や、患者支援団体、栄養関係者から激しい批判・非難の嵐が巻き起こりました。非難はすべて、「乳製品は健康に悪い」というプラント教授の見解に反対するものでした。

しかし、その後、医学界の風向きが少しずつ変りました。医師でないプラント教授が2005年、本書をはじめとする医学関連書の執筆が高く評価されて、英国王立医学協会の終身会員に推挙されたのです。

ミルクは、ビタミン・ミネラルなどの栄養素が豊富に含まれている健康的な飲み物だと考えられています。しかし、これは巧みにつくり上げられた幻想です。みなさんは驚くでしょうが、ミルクは、赤ん坊の成長と発達を促すために、たくさんのホルモンやホルモン様物質を高濃度に含んでいる液体(ホルモンカクテル)なのです。ミルクは、単に養分を与えるだけでなく、細胞の分裂と増殖を刺激して、赤ん坊の急速な成長を促します。このため、古来、ミルクは「白い血液」とも言われてきました。

牛乳は急速に生長する子ウシ(体重が1日に1kgも増える!)にとって完璧な飲み物ですが、人間の子ども(体重が1kg増えるのに1ヵ月かかる)には無用です。ましてや大人には害毒以外の何ものでもありません。

つまり、ミルクは、それが人間のもの(母乳)であれ牛のもの(牛乳)であれ、親が赤ん坊に与えるべき数百種類もの化学物質を含んでいる、子どもの成長・発育に適うように精密に造られた非常に複雑な生化学的液体です。牛乳が悪い飲み物というわけではありません。それはすばらしい飲み物です、ただし子牛にとって。ここに牛乳問題の本質があります。

乳房の大きさ、重さ、感じやすさ、さらにはその健康状態は、血液中を流れている微量の生化学的物質 −ホルモン− の影響を受けています。思春期には、成長ホルモンがインスリン様成長因子1(IGF-1)の分泌を促し、その刺激によって乳房が大きくなります。

赤ん坊の細胞分裂を刺激するようにデザインされた物質を、成熟した人間が口にしたらどうなるでしょうか。ミルクに含まれているIGF-1は、細胞の分裂増殖が最も盛んなとき(人間では乳児期と思春期。成人ではがんに罹ったとき)にその力を発揮します。

人間の一生の中で、血液中のIGF-1濃度が最も高くなるのは思春期です。思春期に乳腺が発達するのは、IGF-1が乳腺細胞の分裂・増殖を刺激促進するからです。牛乳から入るIGF-1は、同じメカニズムで、乳がん細胞の分裂と増殖を刺激するのです。

IGF-1だけではありません。みなさんはさらに驚くでしょうが、現在の牛乳は妊娠している牛から搾られています。したがって、市販の牛乳は多量の女性ホルモン(卵胞ホルモンと黄体ホルモン)を含んでいます。バターもチーズもクリームもすべて、女性ホルモン入り牛乳からつくられ、これらの乳製品には女性ホルモンがさらに濃縮されています。

あまりにも長いこと、私たちは「何パーセントかの女性が乳がんになるのは仕方がない」という考えを疑いもせずに受け入れてきました。乳がんにならずに済む方法があるなどとは考えてもみなかったのです。だから、医学・科学・政治・経済のあらゆる分野で、莫大な資金と労力が、乳がんという恐ろしい病気をできるだけ早期に発見して速やかに治療するということにだけ費やされてきたのです。

こんなことでは困ります。

私たちは、タバコを吸えば肺がんに、過度に日光(紫外線)に当たれば皮膚がんになる危険性が高くなることを知っています。だから、肺がんや皮膚がんを避けるための行動を自分で選択することができます。しかし、乳がんに対しては無力感に陥るばかりです。乳がんを避けるのにどうしたらよいのか誰も教えてくれません。だから、具体的な予防行動を何一つとることができないのです。もちろん、年齢が高いこと、母親・姉妹に乳がん患者がいることなどが乳がんの危険因子であることは十分語られています。しかし、このようなことはすべて、自分ではもはやどうしようもないことではありませんか。

プラント教授は、多数の科学的証拠に基づいて、乳がんの有力な原因の一つが乳・乳製品の摂取にあることを世界で初めて明らかにしました。世界中のすべての女性が、乳がんにならないために、万が一乳がんになってしまったら再発・転移を防止するために、『乳がんと牛乳』を活用してくださることが、著者・プラント教授の願いです。

プラント教授は、自分が乳がんになるまでは、牛乳・乳製品の愛好者でした。身体によいと信じていたからです。乳がんになる前は、低脂肪牛乳を大量に飲み、たくさんの乳製品を食べていました。料理には脱脂粉乳を使いましたし、低脂肪チーズとヨーグルトもよく食べていました。牛乳・乳製品はプラント教授の主要なタンパク質源だったのです。乳がんの真犯人に気付いたとき、プラント教授は一切の牛乳・乳製品を直ちに止めることにしました。チーズ、バター、ヨーグルトはもちろん、乳製品を含むほかの食品も全て流しとごみ箱に捨てました。市販のスープ、ケーキ、クッキーなど、いかにたくさんの食品が牛乳・乳製品を材料として使っているかを知って改めて驚いたと、プラント教授は語っています。

日本でも乳がんが急速に増えています、「なぜ、乳がんが増えるのか」と問われると、ほとんどすべての専門家は「食生活の欧米化」という曖昧な言葉で逃げてしまいます。「食の欧米化」とは何でしょうか? 和食と洋食を一言で表わすなら、和食は味噌・醤油・鰹節・昆布の風味で、洋食はバター・クリームの香りのする食事です。「食の欧米化」とは、日本人が牛乳・バター・クリーム・ヨーグルトなどの乳製品を口にするようになったことを言うのです。食の欧米化が乳がん増加の原因なら、食生活を変える(乳・乳製品を食べない)以外に、日本女性を乳がんから救う方法はありません。それなのに、乳がんの専門家が、早期発見・早期治療というお題目ばかり唱えているのは残念です。

プラント教授が勧める乳がん予防の食事の基本は、乳製品(乳牛の肉を含む)を食べない、大豆製品をたくさん食べる、新鮮な野菜・海草・果物を食べるという3点に尽きています。乳製品を食べないというこのプラント・ダイエットの実践は、元来が「穀物+大豆+野菜・海草(+魚)」からなる食生活を送ってきた日本人にはそんなに難しいことではないでしょう。古来、日本には、牛乳を飲み、乳製品を食べるという食習慣はありませんでした。とはいえ、世の中に乳製品が溢れている現在、「乳がん主犯=牛乳・乳製品」説を心底から納得しなければ、たとえ乳がんになっても完全な「乳断ち」は至難でしょう。「プラント説」に心から納得したら、その納得を友人と分かち合っていただきたいものです。

○初潮を迎えたら・・・○成人式を迎えたら・・・○結婚したら・・・○お母さんになったら・・・○40歳代になったら・・・『乳がんと牛乳』をお読みください。


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