学校給食に関心をお持ちの皆様へ

日本人の日常茶飯
 「あれを食うな、これを食え」という言葉が世間に溢れている。何を食うかは極めて個人的な事柄で、他人がとやかく言うことではない。食という行為は単に健康に生きるためだけのものではないのだ。「乳製品が美味しい」という向きはミルクを飲み、チーズを食えばよい。そんなことは個人の勝手である。ただ、「健康のためにミルクを飲む」というのは個人の愚かな行為に過ぎないが、それをことさら喧伝するのは不遜である。さらに、これを強制するにいたっては罪深い行為(犯罪に近い)と言わざるを得ない。

日本人の日常茶飯は「穀物+大豆+野菜+(魚)」であった。言い換えれば、「一日ニ玄米四合(しごう)ト味噌ト少シノ野菜ヲ食ベ」(宮澤賢治)である。日本人は、過去 2000 年にわたって、コメをはじめとするでん粉が主成分の穀物に支えられてきた。この食生活は明治維新によって西洋文化が導入されても基本的に変わることはなかったが、過去40年(1世代)という短期間で日本人の食生活は一変してしまった。

仮に日本人の「穀物+大豆+野菜+(魚介類)」という食生活の基本的原型が1000年前に成立したと仮定する。1000年という期間がどの位の長さなのか実感できないだろう。そこで別の物差しで1000年という期間を考えてみる。あなた方(読者)のひとり1人に2人(21人)の親がいる(母親と父親)。その母親と父親にもそれぞれ2人の親(祖父母)がいる。すなわち祖父母は4人(22人)いる。その祖父母にも2人の親がいた。曾祖父母は8人(23人)である。曾々祖父母は16人(24人)となる。ヒトはだいたい30歳位までに子どもをつくるから1世代を30年とする。30年毎に祖先は倍々に増える。1000年は33世代に相当する。したがって、1000年前に233人の祖先がいたことになる(約86億)。現存の日本人1億3000万(2000年の人口は1億2692万)だから、今から1000年前には1億3000万x 86億人が日本という国土に住んでいたことになる。もちろん、1000年前にこんな途方もない数の人間が日本に存在していたわけではない。ということは私たちの祖先は大部分が共通しているということだ。

現在の酪農家は4種類の乳牛から搾乳しています。妊娠していない牛、妊娠前期の牛、妊娠中期の牛、妊娠後期の牛の4種類です。出産前の2ヶ月間(乾乳期)を除いて、すべての牛からミルクを搾ります。ミルクはタンク内に集められ、ミルクメーカーに出荷されていますから、日本のミルク(もちろん他の先進国のミルクも同様)の4分の3(75%)は妊娠牛からのミルクです。したがって、妊娠牛からのミルクには女性ホルモン(数百pg/mlのエストロゲンとその数百倍のプロゲステロン)が含まれています。現在のアイスクリーム、チーズ、バター、ヨーグルトなどの乳製品は、みなこの妊娠牛からの女性ホルモン入りミルクから作られています。

私たちの身体は86億人もの人たちの血液が混ざりあって(今風に言えば遺伝子の組み換えによって)でき上がった。さらにその身体は60兆もの細胞から成り立っている。細胞の形態が変わるわけではないが、その構成成分(アミノ酸や脂肪酸など)は毎日の食事成分で日々置き換わっている(新陳代謝という)。アメリカ人が食べているような食事を摂れば、私たちの細胞はアメリカ人の食事に含まれているアミノ酸や脂肪酸などによって構成されることになる。私たちの身体は私たちの食べたものそのものである(We are what we eat.)。そう、私たちの身体は「日常茶飯」によって構成され機能しているのだ。今、私たちは、この86億の祖先が食べ続けてきたものを捨て、祖先が全く知らなかったものを食べている。

食生活の欧米化の本質
食生活の欧米化は動物性食品の増加と穀類の減少と言われている。食生活で、日本人とアメリカ人とで最も大きな違いは何か。アメリカ人は日本人に比べて圧倒的に多量の肉類(とくに牛肉)と乳・乳製品を食べる(FAOSTAT Database Collections. http://apps.fao.org/cgi-bin/nph-db. pl?subset=nutrition/)。東京でオリンピックが開催され、新幹線が走り、東名高速道路が開通した記念すべき1964年(昭和39年)で比較すると、アメリカ人の肉類消費量は265.7 g、日本人は35.6 gであった。アメリカ人は日本人の7.5倍もの肉を食べていた。同年のアメリカ人の乳・乳製品の消費量1263.4 gは日本人の135.6 gの実に9.3倍であった。1998年になると、アメリカ人の肉消費量は337.2 gに増えたが、日本人も115.5 gもの肉を食べるようになり、彼我の差は3.3倍になった。一方、乳・乳製品の消費量は日本人で増えたが(342.3 g)、アメリカ人ではかえって減少した(1144.6 g)。それでも、最近のアメリカ人は日本人に比べて3.3倍も乳・乳製品を消費している。この肉と乳・乳製品の多量消費がアメリカ人の食生活の特徴である。

日本人の肉消費量はアメリカ人に比べて少ない。その替わりに日本人は魚介類を食べる。最近(1998年)の日本人の魚介類消費量はほぼ200 gで、アメリカ人の60 gに比べて、3倍も多く魚肉を食べる。魚肉と獣肉の違いはあるが、ともに動物性タンパク質の宝庫である。そこで、「魚肉+獣肉」を計算すると、アメリカ人は400 gの肉を食べ、日本人は313 gの肉を食べる。つまり、日本とアメリカで肉の消費量には大きな差はない。つまり、日本人とアメリカ人の食生活における最も大きな差異は乳・乳製品の消費量である。

椀と皿、箸とフォーク・ナイフ、醤油とソースという分類もあるが、欧米料理(洋食)と日本料理(和食)の最大の違いは乳・乳製品を使うか使わないかにある。洋食の特徴はバター・クリームにある。端的には、バターの香りのする料理が洋食である。

牛乳
一般人が牛乳を飲めるようになったのはもっぱら敗戦後のことである。牛乳消費量は高度経済成長期の1960年代に入って急速に増えた。1946年には1.13 kgであった年間1人当たりの牛乳・乳製品の消費量は、1960年12.0 kg、1970年28.8 kg、1980年42.0 kg、1990年47.5 kg、1995年には52.7 kg、2001年には62.1 kgとなった。2001年の消費量は1946年の実に55倍である。

日本人がなぜ牛乳を飲むようになったのか。獣の分泌液は日本人の忌み嫌うものであったのに、日本人は好奇心が強い。圧倒的な体格の西洋人は何を食っているのか。江戸末期・明治初期の日本人は好奇の眼で西洋人の食べ物を観察したことだろう。西洋人は獣肉を食らい、牛乳という白い液体を飲んでいる!あれが彼らの秘密兵器だ!西洋人のように大きく強くなるには、獣肉を食い牛乳を飲まなくてはならない。日本人の赤ん坊だって母乳だけで体重が3ヶ月で2倍になる。牛乳神話の始まりである。

戦後、連合軍総司令部(GHQ、中心はアメリカ)は学童に脱脂粉乳でつくったミルクを飲ませた。あれで牛乳が飲めなくなったという人もいるが、戦後生まれのものはこの脱脂粉乳で牛乳の味と匂いに慣れた。1954年には学校給食法が公布された。学校給食の主体はコッペパンと牛乳であった。覚えておられる方もいるだろうが、「米を食っていたから戦争に負けた」「米を食うと頭が悪くなる」などととんでもないことを言う人もいた。アメリカの映画で観たパンとバターにフライドエッグ、牛乳とコーヒーという朝食は日本人の憧れでもあったから、日本でパン食が急速に普及した。今考えると、脱脂粉乳の支給とパンと牛乳からなる学校給食は、アメリカの穀物戦略の一環であったのかも知れない。1950年代のアメリカは緑の革命の真只中にあり、余剰穀物の売り捌き先として巨大な人口を抱える日本が標的となった。米食民族をパン食民族に変えようとしたのである(この辺の事情は、鈴木猛夫「『アメリカの小麦戦略』と日本人の食生活」藤原書店、2003年2月に詳しい)。事実、日本人の乳・乳製品の消費量が急増したのは1960年代に入ってからのことである。それでも賢明な日本人の乳・乳製品の消費量はアメリカの1/3以下に止まっている。

しかし、牛乳消費量の増加に一役も二役もかったのはなんと言ってもアイスクリームだろう。牛乳の臭いが嫌いだという人でも、あの舌の上でとろける柔らかい甘味を嫌う人は少ないからだ。

現代の牛乳
現代の酪農は昔の酪農と大きく異なっている。根本的な違いは「妊娠牛からミルクを搾るようになった」ということである。哺乳類は、出産後にミルクを出すが、母親は子がミルクを飲み続けている間は妊娠しない。子の鳴き声、乳首の吸引、乳房の突き上げなどによるプロラクチン・オキシトチンの分泌が排卵を抑制するからだと言われている。通常、子牛は生後3月ほどで離乳するから、出産3ヵ月後には妊娠可能になる。ウシの妊娠期間は、ヒトと同じく、280日である。妊娠すると、通常、ミルクの分泌が少なくなる。ヒトも同様である。

ところが現代の酪農では、メス牛は妊娠しながらも大量のミルクを出す。濃厚飼料を与え、搾乳器で吸乳し続けるからである。妊娠すると、子宮内に胎児を保持するために、血中の卵胞ホルモン(エストロゲン)濃度と黄体ホルモン(プロゲステロン)濃度が高くなる。したがって、妊娠中の乳牛から搾ったミルクにはこれら女性ホルモンが含まれている。

現在の酪農家は4種類の乳牛から搾乳している。妊娠していない牛、妊娠前期の牛、妊娠中期の牛、妊娠後期の牛の4種類である。出産前の2ヶ月間(乾乳期)を除いて、すべての牛からミルクを搾る。ミルクはタンク内に集められ、ミルクメーカーに出荷されているから、日本のミルク(もちろん他の先進国のミルクも同様)の4分の3(75%)は妊娠牛からのミルクである。したがって、妊娠牛からのミルクは女性ホルモン(数百pg/mlのエストロゲンとその数百倍のプロゲステロン)を含んでいる。現在のアイスクリーム、チーズ、バター、ヨーグルトなどの乳製品は、みなこの妊娠牛からの女性ホルモン入りミルクから作られている。

妊娠している牛から搾った牛乳は、飲用で女性ホルモン作用を示す(ラットの子宮肥大試験で確認:第94回アメリカがん学会、ワシントン、2003年7月)。世の中のお母さん方は、自分や子どもが飲んだり食べたりしているミルクや乳製品が妊娠している牛から搾られた牛乳から作られているなどとは夢にも思わないだろう。母親は、自分の出産経験から、子どもがミルクを飲んでいる間は妊娠しないと思っているからだ。妊娠しているウシの体液(ミルク)を子どもに飲ませる母親がいるだろうか。前思春期の子どもに毎日女性ホルモン入りミルクを大量に飲ませるということは、極言すれば、前思春期の子どもが低用量避妊ピルを毎日飲ませているようなものである。

このホルモンは本物のホルモンであるから(ウシの女性ホルモンは人間のものと同一)、そのホルモン作用は外因性内分泌撹乱物質(環境ホルモン)の比ではない(およそ1万倍から10万倍)。1998年頃、環境ホルモンをめぐって世界中が大騒ぎしたことを覚えておられるであろう(シーア・コルボーン、ダイアン・ダマノスキ、ジョン・ピーターソン著、長尾力訳「奪われし未来」翔泳社、1997年9月;デボラ・キャドバリー著、井口泰泉監訳・古草秀子訳「メス化する自然 環境ホルモン汚染の恐怖」集英社、1998年2月)。日本でも、子どもを育てるのに母乳(PCB)がいいか、人工ミルク(哺乳瓶からビスフェノールAが溶出する)がいいかという不毛かつ罪作りな議論がメデイアを賑わせた。

現代牛乳の魔力
人間がこのようなホルモン入り牛乳を飲むようになったのはたかだか70年のことに過ぎない。それまでは、乳牛の1日当たりのミルク生産量はたかだか5-10リットルであった。安価な化学肥料によって穀物が増産され、その余剰穀物を家畜飼料に回すことが可能になった(第一次世界大戦後)。さらに1930年頃からタンパク飼料(肉骨粉)が導入され、牛乳の通年生産が可能になり、搾乳量が急上昇した。欧米でも乳・乳製品が大量に消費されるようになったの1930年以降のことある。この頃から、欧米で肺がん、大腸がん、乳がん、前立腺がん、卵巣がん、子宮体部がんなどのホルモン依存性の悪性腫瘍による死亡が著しく増えた(尿道下裂・停留睾丸・精巣悪性腫瘍などの小児生殖器異常の増加は言うまでもない)。日本でも生まれたときからミルク・乳製品を飲んだり食べたりした人々(1960年以降に生まれた人たち)が大挙して40代に突入している(日本は30年遅れて欧米の跡を追っている)。最近、日本で市販されている牛乳がDMBA-誘発乳腺腫瘍(腺がん)に対して強い発生促進作用があることを確認した(第94回アメリカがん学会、ワシントン、2003年7月)。肺がんはホルモン依存性であると聞くとびっくりなさるかも知れないが、現在日本で急増している肺がんは腺がんである。もちろん、タバコと肺腺がんとの関係を否定するものではないが、タバコに関係の深い扁平上皮がんはほとんど増えていない。肺がんはともかく、男性の前立腺がん、女性の乳がんの発生に牛乳が関与していることな間違いない。

1950年には223.8万人の子どもが生まれた。出生率(人口1000対)は28.1、合計特殊出生率は3.65であった。ところが、51年後の2001年に生まれた子どもは117.1万で、出生率は9.3、合計特殊出生率は1.33になってしまった(2002年の合計特殊出生率は1.32)。少子化の主たる原因は、青年の非婚・晩婚という社会現象によるものであろう。しかし、一方で、動物としての日本人の生殖能力が落ちているのではなかろうか。日本人の乳・乳製品の消費量(1人1日当たり)を年齢階級別に見ると、前思春期の7-14歳(334.7 g)と幼児期の1-6歳(237.7 g)の消費量が突出している。因みに、性成熟した青年期(20-29歳)の消費量は128.3 gである。性発達過程にある幼少期に与えるホルモン入り牛乳が、日本人の生殖能力に悪影響を与えている可能性を否定できない。小学校の先生は「他のものはいいから牛乳だけは残すな」とおっしゃるという。また、「喉が乾いたら水の代わりに牛乳を飲め」という親がいるとも聞く。私は、一刻も早く、幼児・学童(ホルモンが最も少ない)にホルモン入り牛乳を飲ませることを止めて欲しいと考えている。

胎内で子牛を育てている妊娠牛が毎日20-30リットルものミルクを出すということは大変なことだ。牧草や穀物を与えるだけではこのようなことは不可能であることは既述した。その結果何が起こったか皆さんもよくご存じのことと思う。日本で発症した狂牛病(牛海綿状脳症、BSE)症例はすべて白黒斑の乳牛(ホルスタイン)であった。現代の酪農技術はたしかにビジネスとして効率がよい。しかし、この技術はウシ本来のリズムに沿ったものではない。

最近では、農薬を使わない牧草・穀物で乳牛を飼育するという「有機酪農」で実績を挙げている酪農家もいるし、パスチャライズド牛乳、脂肪分の多いジャージー乳、放牧酪農を「売り(高付加価値)」にしているところもある。しかし、妊娠している乳牛から搾った牛乳は、どのように工夫しようとも、安心して飲める牛乳ではない。安全なミルクを提供する酪農の鉄則は「妊娠している乳牛からミルクを搾らない」ということである。非妊娠牛が産生する牛乳から作ったアイスクリームなら、消費者は安心して子どもに食べさせることができる。日本の酪農家がこの新しい(本当は新しくない。モンゴルで古来行われている)乳搾りにベンチャー・ビジネスとして挑戦してほしいと思う。欧米にリードされ続けてきた日本の酪農が逆に世界をリードすることになるだろう。本来、牛乳は子牛の飲みものであるから、牛乳は日本人には無用であるが、酪農家には敢えてこのように伝えたい。

なお、ミルクが妊娠牛からのものか非妊娠牛からのものかは、ミルク中のプロゲストロンを測ることによって簡単に識別できる。妊娠牛からのミルクのプロゲストロン濃度は10 ng/mlを超えている。

おわりに
文部科学省は、2003年5月30日付けで、「学校給食における食事内容について」という通達を各都道府県知事らに出した。学校給食の栄養所要量の基準として、学校給食からのエネルギー所要量を、1日の所要量の33%とした。つまり、全エネルギー摂取量の1/3を学校給食(昼食)から摂るとしたのである。それなのに、カルシウムは、1日の所要量の50%を学校給食でまかなうようにした。これは、言い換えれば、学校給食に牛乳を必ず加えよという「強制」である。さらに、学校給食における食品構成について、この通達は次のように述べる。「牛乳については、児童生徒等のカルシウム摂取に効果的であるため、その飲用に努めること。なお、家庭の食事においてカルシウムの摂取が不足している地域にあっては、積極的に調理用牛乳の使用や乳製品の使用に努めること」。先に「人に特定の食品を強制するのは罪深い行為」と述べた。情報を知りながら、国があえてこのような通達を出すことはすでに単なる「罪深い行為」を超えている。

ご両親と学校の先生へ:
牛乳の嫌いな子どもに牛乳を無理強いしないでください。牛乳好きな子どもにも「咽が乾いたら水替りに牛乳を飲みなさい」などとは決しておっしゃらないでください。


お子さまへ:
あなたの健康を損なうおそれがありますので牛乳の飲みすぎに注意しましょう。

もっと詳しく知りたい方は下記のホームページを訪ねてみてください。

食育 ー子どもにバタ臭い食品を与えないー
牛乳と前立腺がん
牛乳と乳がん
安全で付加価値の高い新しいミルクの製造


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