和食:日本の伝統的な食文化

2013年12月、和食がユネスコ無形文化遺産に登録された。和服、和菓子などはわかるが、和食という言葉にはあまり馴染みがない。日本人の伝統的な日常の食事は「穀物+大豆+野菜+魚」であった。つまり、ごはんとおかずが和食の基本である。日常のおかずは焼き魚・煮魚、野菜の煮物で、肉の入っている中華と洋食は外で食べるご馳走であった。

食材として油を使うか使わないかが和食と洋食・中華の分かれ目である。和食は基本的に油を使わない。和食の加熱は水で煮る、蒸す、茹でるが基本で、油で炒めるという調理法は和食にはない。魚を焼くときは直火(じかび)で焼く。

安土桃山時代に伝わったという天ぷらは和食とされているが、天ぷらは魚や野菜を高温の油で揚げたもので、食べるときは油きりをする。欧米人や中国人は調理に用いた油を残りなく食べる。「天ぷらを揚げる」は具材を油で茹でるような感じで、天ぷらの油は食材というよりは調味料のようなものである。

一方、中華料理は油で炒める料理の多いことが特徴である。植物油だけでなく、豚脂(ラード)などの動物脂肪も使う。ただし、バターは夷狄の匂いを放つ食材であったから、中国人は伝統的に乳脂(バター・クリーム)を受けつけなかった。

西洋料理の特徴はバター・クリームなどの乳脂肪を使うことにある。食卓に西洋料理が並ぶとバターの香りが漂う。中華と同様、和食の食材にも乳製品はない。すき焼きは伝統的な和食ではないが、日本の料理で通用する。バターを使わないからである。オリーブ油で焼いた厚めの肉は和風ステーキであるが、バターで香りをつけると洋風ステーキとなる。和菓子と洋菓子の違いも歴然である。

日本の伝統的な食文化である和食は乳製品を使わないが、最近、「乳和食」を提唱する面白い料理家が現れた。麺つゆを牛乳で薄めて食べるそうめんは塩分控えめで濃厚な味わいになるという。近ごろの日本はなんでもありである。


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