日本人は何を食べたらよいか

1. 日本人の日常茶飯

日本人の食生活は、古来「一日ニ玄米四合ト味噌ト少シノ野菜ヲ食ベ」(宮澤賢治)であった。言い換えれば、日本人の食生活の基本は「穀物+大豆+野菜(+魚介類)」であり、日本人は、過去 2000 年にわたって、コメをはじめとするデンプン(糖質あるいは炭水化物)が主成分の穀物に支えられてきた。この食生活は、明治維新によって西洋文化が導入されても基本的に変わることはなかったが、過去40年という短期間では一変してしまった(食生活の欧米化=動物性食品の増加と穀類の減少)。このような穀物を中心とする日本人の食事を「粗食」と呼ぶ人がいるが、この食事は「素食」であって断じて「粗食」ではない。

私たちひとり1人に2人(21人)の親がいる(両親)。その母親と父親にもそれぞれ2人の親(祖父母)がいた。すなわち祖父母は4人(22人)である。その祖父母にも2人の親がいた。曾祖父母は8人(23人)、曾々祖父母は16人(24人)である。ヒトはだいたい30歳位までに子どもをつくるから1世代を30年とする。30年毎に祖先は倍々に増える。1000年は33世代に相当する。したがって、1000年前に233人の祖先がいたことになる(約86億)。私たちの身体は無量無辺の人々の遺伝子が混ざりあってできている。私たちは太古から延々と流れる大河の一滴なのだ。日本人の食生活の原型が1000年前に成立したと仮定すれば、この食事は172億(234-1)の祖先が食べ続けてきたものである。私たちは、今、172億もの先祖が食べ続けてきたものを捨て、祖先が全く知らなかったものを食べている。

食べ物によって細胞の構造が変わるわけではないが、その構成成分(アミノ酸や脂肪酸など)は毎日の食事成分で日々置き換わっている(新陳代謝という)。アメリカ人が食べているような食事を摂れば、私たちの身体はアメリカ人の食事に含まれているアミノ酸や脂肪酸などによって構成されることになる(もちろん、私たちの皮膚の色や身体つきがアメリカ人のようになるわけではないが)。私たちの身体は私たちの食べたものそのものである。そう、私たちの身体は「日常茶飯」によって構成され機能している。

戦前および戦後間もなくの日本人の身体は小柄であった。1962(昭和37)年の17歳男子の平均身長は163.8cm、体重55.7kgであった(同年齢の女子の身長と体重は153.6cmと50.9kg)。こんな体格(体力ではない)では、オリンピックで、大男・大女の西洋人に勝てるわけがない。「大きいことはいいことだ」「タンパク質を摂ろう」が1960年代の合い言葉であった。たしかに、最近の日本人は大きくなった。2001(平成13)年の17歳男子は、身長170.3cm、体重62.1kgになった(女子の体重と身長は157.2cmと49.9kg)。過去39年間に17歳男子と女子の身長はそれぞれ6.5と3.6 cm伸びた。男子の体重は6.4kg増えたが、女子では1kg減った。若い女性は痩せることに骨身を削っている! 身長160センチの女性に理想の体重を訊ねると40キロだという。160センチで40キロ(BMI=15.6)の女性は病的な痩せ(羸痩;るいそう)である。身長160センチの女性の体重は55キロ(BMI=21.5)が望ましいのだが。

2. 糖質(炭水化物)の意味

近代栄養学は食品を分析して、タンパク質、脂肪、糖質(かつて炭水化物と言われていた。デンプンと考えてよい)、ビタミン、ミネラルの5つを栄養素と名付けた。最近はこれら5つに食物センイを加えて6大栄養素という。ひとにとって最も重要な栄養素は糖質である。ヒト(動物としてのひと)は大脳が発達した動物である。脳は体重の2%を占めるに過ぎないが、そのエネルギー消費量は全エネルギーの20%(400kcal)にも達する。しかも、脳は専らグルコース(血糖)を利用している。ひとが生きているということは脳が機能しているということと同義である。脳が機能するためには毎日少なくとも100gの糖質が不可欠なのだ。

ヒトは肝臓と筋肉にグリコーゲン(動物デンプン)という形で糖質を保有している。肝臓に60g、筋肉に120gほどのグリコーゲンがある。肝臓のグリコーゲンは分解してグルコースとして血中に放出されるが、筋肉のグリコーゲンは筋肉のために使われ、血液にグルコースを供給することはない。筋肉はグルコースを乳酸に分解する過程でエネルギーを獲得する。また、心筋、副腎髄質、赤血球などのエネルギー源もグルコースで、1日40gほどのグルコースを消費する。したがって、ひとは1日150g以上デンプンをグルコース源として摂らなければならない。デンプンが多量に存在するのは植物だけである。動物の肉を食べても、補給される糖質はごくわずかである。デンプンが少ないときは、やむを得ず、タンパク質の構成成分であるアミノ酸などからグルコースを作って、脳や心筋にエネルギー源を供給しなければならない。1日150gのデンプンをコメから摂るとすると、水分60%の玄米メシで420gを食うことになる。これはメシ茶わんに軽く盛って(1杯80g)5杯のメシに相当する。

3. 哺乳類(ウシ、ブタ)を食うということ

ひとは自分の身体にあるものを食物として摂る必要はない。ヒトの身体にはタンパク質(肉)もあれば、脂肪もある。肉を食うことを薦めるひとは、人間の身体構造に近いものを食うのがよいという(この論をさらに進めると、ひとの最良の食物はヒトということになる)。ひとがヒトを食べる食人はタブーになっているが、食うものが全くなくなれば(極限の飢餓状態)ひとはヒトを食う。他に口にするものがあればひとはヒトを食わないというのが人類の流儀である。

ウシ、ブタなどはヒトと同じ哺乳類の仲間である。ひとが哺乳類を食う必要はない。彼らの身体はヒトの身体と基本的に同じだからだ。哺乳類の肉は、他に口にするものがないときだけ食えばよい。ひとが哺乳類を食うということは、ひとがヒトを食い、ウシがウシやヒツジを食うことと基本的に変わりはない。

ひとの食物としては鳥類は哺乳類よりましで、魚類は鳥類に比べてさらによい。ひとの食物はヒトからの遺伝的距離が離れているものほどよい。つまり、ひとの食物としては植物が最高である。植物は、ひとにとって最も大切な糖質(デンプン)の唯一の供給源である。昨今、繊維、センイとうるさいが、センイを供給してくれるのは植物だけである。

ヒトは植物から必要なものを補給するように進化してきた動物である。しかし、ウシやヒツジと違って、草や木の葉のセルロースを利用するようにはならなかった。穀物、果実や根茎など、植物が光合成で蓄えたデンプンを利用することによって、生命を維持するようになった哺乳類の一種である。エスキモーとて例外ではない。彼らが移り住んだ地がたまたま食糧となる植物がなく、クジラなどの海棲哺乳類を捕食する以外に生きる術がなかっただけのことである。西洋人がウシを食べミルクを利用するのは、彼らがその風土に適応しただけのことに過ぎない。西洋人の食生活は、西洋という地にあって長い時間をかけて築き上げられた食体系である。西洋の地で発達した近代栄養学(タンパク・ビタミン・ミネラルという成分栄養学)を日本語にそのまま翻訳すべきではない。

4. 牛乳 −この魅惑的な白い液体の魔力

日本人の古来の食文化には牛の乳汁を飲むという伝統はなかった。もちろん、日本でも牛馬は飼われていた。しかし、日本の牛馬は農耕・運搬用であり、その乳汁を飲んだり、屠殺して肉を食用に供するということはなかった。このことはアジア・アフリカに共通している(例外はある)。牛乳をそのまま(全乳のこと。現在は減菌・滅菌している)飲むのは西洋人(皮膚の色の薄い人たち;コーカソイド)だけである。

日本人が牛乳を飲みはじめたのは明治時代、西洋文化の到来以降のことである。外観を西洋風にすることを文明開化といい、髪型をザンギリにし、洋服を着ることが洋風とされた。皇族の正装は燕尾服にシルクハット、皇室の正餐はフランス料理とされた。当然、西洋人が好む牛乳の効能も喧伝された。しかし、食習慣のような文化の基層をなすものは簡単には変わらない。明治中頃の東京での牛乳消費量は年間1人当たり1.2 L程度であったという。一般人が簡単に口にできるものではなく、牛乳は薬として用いられていたらしい。

一般人が牛乳を飲めるようになったのはもっぱら敗戦後のことである。牛乳消費量は高度経済成長期の1960年代に入って急速に増えた。1946年には1.13kgであった年間1人当たりの牛乳・乳製品の消費量は、1960年12.0kg、1970年28.8kg、1980年42.0kg、1990年47.5kgとなり、2001年には62.1kgとなった。2001年の消費量は1946年の実に55倍である(図1

日本人がなぜ牛乳を飲むようになったのか。獣の分泌液は日本人の忌み嫌うものであったのに。日本人は好奇心が強い。圧倒的な体格の西洋人は何を食っているのか。江戸末期・明治初期の日本人は好奇の眼で西洋人の食べ物を観察したことだろう。西洋人は獣肉を食らい、牛乳という白い液体を飲んでいる! あれが彼らの秘密兵器だ! 西洋人のように大きく強くなるには、獣肉を食い牛乳を飲まなくてはならない! 牛乳神話の始まりである。

戦後、連合軍総司令部(GHQ、中心はアメリカ)は学童に脱脂粉乳でつくったミルクを飲ませた。あれで牛乳が飲めなくなったという人もいるが、1930-1940年生まれのものはこの脱脂粉乳で牛乳の味と匂いに慣れた。1954年には学校給食法が公布された。学校給食の主体はコッペパンと牛乳であった。覚えておられる方もいるだろうが、「米を食っていたから戦争に負けた」「米を食うと頭が悪くなる」などととんでもないことを言う人もいた。アメリカの映画で観たパンとバターにフライドエッグ、牛乳とコーヒーという朝食は日本人の憧れでもあったから、日本でパン食が急速に普及した。今考えると、脱脂粉乳の支給とパンと牛乳からなる学校給食は、アメリカの穀物戦略の一環であったのだろう。1950年代のアメリカは緑の革命の真只中にあり、余剰穀物の売り捌き先として巨大な人口を抱える日本が標的となった。米食民族をパン食民族に変えようとしたのである。日本人は、官民あげて、その戦略の一端を担った。

しかし、牛乳消費量の増加に一役も二役もかったのはなんと言ってもアイスクリームだろう。牛乳の臭いが嫌いだという人でも、あの舌の上でとろける柔らかい甘味を嫌う人は少ないからだ。

牛乳の消費量が増えただけではない。日本人は肉も食べるようになった。1947年の1人当たりの年間消費量は2.1kgであったが、1960年に6.8kg、1970年に15.5kg、1980年に24.8kg、1990年に26.0kg、1995年には30.0kgに達した(ただし、狂牛病の発生により、最近の肉消費量は低迷している。2001年の消費量は27.8kg)。1946-1995年の50年間で14倍に増えたことになる(図1)。

その一方、日本人の主食であったコメの消費量が減った。1946年のコメの消費量(年間1人当たり)は88.0kgであった。その後、コメの増産に伴ってコメが十分に食べられるようになり、1959年には133.0kgという戦後の最大消費量を示した。その後、日本人はだんだんコメを食べなくなり、1970年に99.0kg、1980年に82.4kg、1990年に72.2kg、1995年には61.3kgとなった(図1)。現在の日本人はコメをよく食べていた1959年に比べると、その半分以下のコメしか食べていないことになる。減反し、青田刈りしてなおコメが余るというのが日本のコメ造りの現状である。

5. 乳糖分解酵素(ラクターゼ)活性持続症

牛乳に含まれている糖質は乳糖(ラクトース)である。乳糖は2糖類の糖質で、2つの単糖類(ガラクトースとグルコース)から構成されている。乳糖が存在するのは哺乳類の乳汁だけである。人乳中の乳糖は100g中7.2gで全哺乳類の乳汁のなかで最も多い(牛乳は4.4g)。なぜ、哺乳類の乳汁にだけ乳糖が存在するのか明らかではないが、乳児で急速に発達する脳髄や細胞壁の構築のため、これらの成分として多量のガラクトースが要求されるかららしい。ただし、成人では必要なガラクトースは肝臓においてグルコースから作られるので乳糖を必要としない。乳汁中の乳糖は小腸上半部(空腸)の粘膜上皮に存在する乳糖分解酵素(ラクターゼ、正式にはb-ガラクトシダーゼ)によってガラクトースとグルコースに加水分解される。これら2つの単糖類は小腸上皮に存在する糖輸送系によって吸収される(細胞内に入る)。したがって、乳糖の利用には乳糖分解酵素が重要な役割を演じている。

離乳期以降はこの乳糖分解酵素の活性は急速に低下する。酵素活性の低いひとが牛乳を飲むと、乳糖は分解されないまま腸内細菌の多い大腸に達する。腸内細菌は乳糖の一部を分解して乳酸、酢酸、ギ酸などの有機酸をつくり、ギ酸は炭酸ガスと水素に分解する。これらの有機酸が腸壁を刺激して腹痛を起こし、ガスは腹鳴、腹部膨満感、鼓張の原因となる。腸内細菌による分解を免れた乳糖は、その高浸透圧性によって、腸管の水分吸収を妨げるとともに腸壁から水分を吸いとって腸内容物を水様便として下痢を誘発する。これが西洋人が名付けた「乳糖不耐症」である。離乳後に牛乳が飲めなくなるのは正常な発達過程であり、この「乳糖不耐症」なる用語はあまりにも西洋中心主義的で不適切である。離乳後も生涯にわたって牛乳を飲める状態は「乳糖分解酵素活性持続症(lactase persistence)」と名付けた方がよい。

すべての哺乳類は、離乳後は親が食べているような固形食物から栄養を摂るようになる。これは自然の経過であって、すべての哺乳動物に共通して認められる食行動の変化である。日本人の乳糖分解酵素の活性は14-15歳で乳児期の10分の1に低下し、以後ずっと低い活性のままで経過する。日本人の中にも、牛乳を飲み続けることによって、牛乳が飲めるようになるひとがいる。飲乳による乳糖分解酵素活性の誘導と腸内細菌叢の変化が乳糖への適応をもたらすものと考えられる。しかし、この適応は不完全であって、大量の牛乳を飲めば腹部の不快症状が発生する。

乳糖は、自然界には、哺乳類のミルクの中にだけ存在する。なぜ、ミルクが乳糖という特殊な糖を含んでいるのか? 生まれた子どもがいつまでもミルクを飲んでいると、母親は次の子どもを胎内に宿すことができない。排卵が起こらず妊娠できないはらだ。子どもがある程度成長すると(体重が生れたときの3倍)、乳糖分解酵素の活性が低下しているために、お腹が痛くなってミルクを飲めなくなる。そこで親が食べているような食物をミルクの換わりに食べるようになる。すると排卵が起こって、母親が次の子どもを宿すことができるのだ。これが、すべての哺乳類に備わっている離乳機構である。哺乳類が子孫を残せるように、ミルクが乳糖という特別の糖質を含むようになったのだ。ミルクは生後の一定期間だけ子どもが飲めるようになっているのである。

ヒトのなかには離乳期以後も乳糖分解酵素の活性が高く保たれたままのひと達がいる。このひと達は、生涯にわたって腹部不快感を起こすことなく大量の牛乳が飲める。乳糖分解酵素活性持続症の集団は、約8000年前にメソポタミアの「肥沃な三日月地域」において突然変異によって出現したと云われている[1]。この集団が北の日照時間の短い、寒冷な地域に移動した。わずかな太陽光の有効利用のために皮膚の色が薄くなる突然変異が選択された。この変異集団(コーカソイド)はタンパク質とカルシウムを濃厚に含む牛乳を用いることが生存要件であった。乳糖分解酵素活性持続症は小麦と牛乳(およびバターとチーズ)を基本とする食生活を可能にしてこの突然変異種の生存を支えてきた。哺乳動物で、離乳後も乳汁を飲むのは一部の人類だけである。言い換えれば、現在の西洋人は、離乳後も乳汁を飲めるようになった人類の一変種の子孫である。

6. 牛乳と骨粗鬆症

牛乳100gには約100mgのカルシウムが含まれている。したがって、牛乳は高カルシウム食品である。日本では、成人1人1日当たり600〜700mgのカルシウム摂取が必要とされている(厚生省:第6次改定日本人の栄養所要量、1999)。2001年の平均カルシウム摂取量は550mgで、日本人に唯一不足している栄養素はカルシウムであるという。カルシウムが必須ミネラルであることはいうまでもない。最近では、カルシウムは骨粗鬆症との関連で語られることが多い。骨粗鬆症になると、骨折を起こし易くなる。高齢者の骨折は「寝たきり」という悲惨な状態を招く。栄養学関係者は、「牛乳を飲みなさい。骨量が増え、骨粗鬆症を予防する」と強調してきた。

6-1. 牛乳と骨粗鬆症 −日本と西洋−
フィンランド人、スウェーデン人、オランダ人は多量の牛乳・乳製品を消費する。1994-1998年の牛乳・乳製品の年間1人当たりの消費量を比較すると、フィンランド人の消費量(566.3kg)は日本人(125.8kg)の約4.5倍である。それでは、西洋人には骨粗鬆症や骨折が少ないだろうか。大方の予想に反して、西洋人は日本人に比べて大腿骨頚部骨折(原因は骨粗鬆症)を起こしやすい[2,3]。例えば、35歳以上の女性の大腿骨頚部骨折の発生率はイギリスのオックスフォードで人口10万対202であるが、鳥取県の同年齢女性における発生率は半分以下の90である[4]。

アベロウ(Abelow)ら[3]は、16カ国の動物性食品およびカルシウムの摂取量と50歳以上の女性における骨折発生率との関係を調べている。その結果、動物性食品の摂取量と骨折の間には強い正の相関関係が認められた(図2)。

つまり、肉や牛乳をたくさん摂取している国ほど骨折が多い。また、カルシウム摂取量と骨折発生率の関係をみると、カルシウム摂取量の多い国ほど骨折が多いという結果になった。Abelowらは、カルシウムをたくさん摂取していても、動物性タンパク質の摂取量が多いと酸・塩基平衡が酸性側に傾き、骨のカルシウムが溶け出して尿中に排泄されてしまうと考えた(これについては再述する)。

イギリスと日本で骨量と骨折(大腿頚部骨折)を比較した疫学研究[5]にも触れておく。この研究は、ハートフォードシャーの男172人および女143人と和歌山県太地の男86人および女90人について、体格、骨量(大腿骨頚部と腰椎)、生活習慣(飲酒、喫煙、カルシウム摂取量、屋外活動)などを比較したものである。イギリスでは4年後、日本では3年後に骨量を再検査して加齢による骨量変化を比較している。初回測定の骨量は男女ともにイギリス人の方が多かったが、骨量の1年当たりの減少率は男女ともにイギリス人の方が大きかった。すなわち、イギリス人の骨量は日本人に比べて加齢とともに急速に減少した。この傾向はとくにイギリス人女性で著しい。この調査では、男女とも、体格(BMI)はイギリス人の方が大きく、屋外運動量もイギリス人の方が多い。体格が大きく、運動量が多いということは骨量の増加に役立つことである。それにもかかわらず、イギリス人では年齢とともに骨量が減少した。牛乳を飲める西洋人(乳糖分解酵素活性持続症)においても、牛乳は骨粗鬆症を予防できないのだ。

牛乳を飲んでも骨粗鬆症の予防にならないことはアメリカで行われた大規模疫学調査[6,7]において実証されている。そのためアメリカでは、1998年から、「骨粗鬆症の予防に牛乳を」というコマーシャルがメデイアから消えた。日本でも2003年から骨粗鬆症に絡めた牛乳の宣伝が行われなくなったことにお気付きの方もおられるであろう。

牛乳を飲まないということはカルシウム摂取量が少ないことと同義に扱われるが、牛乳を飲まない日本人の方が牛乳を多量に飲む欧米人より骨量の減少が少ないという矛盾はどのように解釈したらよいのだろうか(後述)。つぎの2つがこの矛盾を説明する。1)日本人のカルシウム要求量はイギリス人(西洋人)に比べて少ない(日本人は少ないカルシウムで生存できるという遺伝的特性をもつ)。2)牛乳中のカルシウムは役立たない。
 
6-2. 牛乳は骨粗鬆症を助長する
なぜ、牛乳やチーズのカルシウムが骨粗鬆症の予防にならないのか。牛乳消費量の多い国民は牛乳に加えて肉・チーズなどの高タンパク食品の摂取も多い。タンパク質を構成するアミノ酸にはメチオニン、システインなどの含硫アミノ酸が含まれている。動物性タンパク質は植物性タンパク質に比べて含硫アミノ酸が多い。これらのアミノ酸は分解されて最終的に硫酸イオンとなり体液の酸・塩基平衡を酸性側に傾ける。酸性になった体液をアルカリにして酸・塩基平衡を保たなければならない。中和に用いられるアルカリ源はカルシウムである。体内のカルシウムの99%は骨に存在する。中和には骨のカルシウムがもっぱら使われる。タンパク質の摂取量が多くなると尿中に排泄されるカルシウムが増えることは、1970年代に行われた代謝実験でよく知られた事実である[8-12]。

アメリカの骨・ミネラル学会は、1997年、「高タンパク食の骨代謝に与える影響」をめぐってシンポジウムを開催した。このシンポジウムで、アルバート・アインシュタイン医学校のバーゼルとワシントン大学のマッセイは「必要以上にタンパク質を摂ると骨量が減る」ことを強調し、骨粗鬆症の予防のためにはタンパク摂取を少なくし、野菜や果物(ともにカリウムが多い)を多く摂ることを勧めている[13]。一方、ワシントン大学のヒーニーは、高タンパク食が尿中にカルシウムの喪失を促すことは間違いないが、失われる以上にたくさんのカルシウムを摂れば骨量の減少を防ぐことができると述べた[14]。カルシウム摂取量が少ないときにたくさんのタンパク質を摂取することは問題であるが、摂取量が多ければ多く摂っても問題はないというのである。タンパク質摂取量が50gであれば1,000mgのカルシウム摂取が必要であり、75g のタンパク質には1,500mgのカルシウムが必要というのだ。これはとんでもない数値であるが、困ったことに、アメリカの食品・栄養委員会は1997年にこの数値を勧告している。牛乳はタンパク質がほぼ20%を占める高タンパク食品である(牛乳は水分90%の液体であることを想起してほしい)。今はやりの低脂肪乳はさらにタンパク質の占める割合が増える(脂肪分が2%、1%になれば、タンパク質はそれぞれ25%、30%に増える)。

乳糖分解酵素活性持続症(牛乳が飲める)の欧米人でさえ牛乳中のカルシウムは骨粗鬆症の予防に役立たない。役立たないどころか、牛乳は骨粗鬆症を助長する。まして、牛乳が飲めない(正常である!)日本人が牛乳を飲んでもカルシウムは吸収されない。腸管内の水分だけでなく、腸上皮細胞内の水分も取り込んで、腸管内を下ってしまう。日本人に対する牛乳の効能は便を柔らかくする以上のなにものでもない。

1960年以前の日本人のタンパク摂取量は少なかった(欧米でも平均的な西洋人のタンパク質摂取量が急増したのは第一次世界大戦後のことである)。人間の腎臓は多量のタンパク質の処理には不向きにできている。成長したひとには多量のタンパク質は必要ない。19歳から51歳の成人に対するアメリカのタンパク質摂取量の勧告値は0.75g/kgである。これに従うと、体重60kgの人は1日に45gでよいことになる。WHOは成人のタンパク質摂取量は1日当たり0.6g/kg でよいという。60kgの人は36gでよいことになる。日本の第6次栄養所要量(2000年から2004年まで適用)におけるタンパク質所要量は60歳以上の男性でなんと65g、女性で55gである。現在の日本人のタンパク質摂取量は総カロリーの16%にも達している。1998年の国民栄養調査によると、50-59歳の日本人は平均して87.3gのタンパク質を摂取している(うち、動物性タンパク質が46.9gで54%を占める)。日本人の身体が悲鳴をあげている。「タンパク質が多すぎる!」

牛乳を飲まないでカルシウムが充分に摂れるのか。この問いには「象を見よ、象は牛乳を飲んでいますか」と答えよう[15]。アフリカ象の巨大な骨格、2メートルにおよぶ立派な牙。あれはみな草木に含まれるカルシウムから作られたのだ。大地に根を張る植物は土壌のカルシウムを吸収して根や葉に保有する。陸上の巨大な草食動物はみなこのカルシウムによってあのような巨体になった。太陽光の少ない地域の習性だろうか、西洋人は生野菜を好む。料理名はサラダという。困ったことに、最近の若い日本女性も野菜サラダを好む。理由を尋ねると「生野菜は新鮮だから」という。生の植物の葉や茎はウシやヒツジの食べ物であって人間の食べるものではない。植物は生き物だ。植物の葉は、虫に食べられないように、保護膜(自然の農薬)で覆われている[16]。草木のセルロースを利用する草食動物は胃腸内の微生物がその保護膜も含めて分解してくれるのだ。野菜は茹でこぼしたり、油通しして食べるに越したことはない。古来、アジア人(日本人もしかり)は、野菜を茹でたり、油で炒めたり、漬け物にしたりして食べてきた。調理すればかさが減ってたくさん食べられる。野菜中のカルシウムは牛乳のカルシウムと同程度に吸収される[17]。

7. 牛乳・乳製品が心筋梗塞・脳梗塞を招く

哺乳類は生まれたときの体重が3倍になるまで母乳で育つように設計されている。3キロ強で生まれた人間は1年で体重が3倍の10キロ強になる。誕生日を過ぎれば母乳を必要としない。ウシは40キロで生まれ3ヵ月で3倍の120キロに育つ。その後、子ウシは親と同じように草を食って14ヵ月で妊娠可能なまでに育つ。母ウシが子ウシの哺育用に分泌する体液が牛乳である。乳飲み子は速やかに生長するから、乳液は大量のカルシウムを含む(牛乳は1mg/ml)。離乳後の哺乳類には多量のカルシウムを含むミルクは必要ない。ましてや異種動物のミルクは有害でありこそすれ益は全くない。

栄養所要量の第6次改定でカルシウムは1日600mg必要ということになった。この数字はどのように得られたのか。カルシウム所要量の決め方に簡単に触れておく。[尿中排泄量]+[経皮的損失量]+[体内蓄積量]を計算し、これを吸収効率(=[摂取量−糞中排泄量]/[摂取量])で割った数値が必要摂取量ということになる。この計算に必要な尿中排泄量、経皮的損失量、体内蓄積量、吸収効率の基礎的データはすべて欧米人から得られた数値である。たとえば、1日当たりの尿中排泄量は[体重0.75x6mg]というSchaafsma[18]などが提唱する計算式で求めている(体重はkg)。肉や乳製品を大量に食う欧米人は大量のカルシウムを尿中に排泄することは先に述べた。カルシウム動態の異なる欧米人のデータを日本人に当てはめて所要量を決めるなどということはできない。カルシウムの所要摂取量600mgはかなり水増しされた数値である。日本人はすでに1日546mgものカルシウムを摂っている(2002年度国民栄養調査)。60代の日本人はなんと605mgも摂っている。骨粗鬆症の予防のためにカルシウムを摂りましょう(=牛乳を飲みましょう)という宣伝が行き亘ったためだろう。高齢者にヨーグルトを勧めるお医者さんや栄養士がいる。牛乳を飲めない日本人(腹痛や下痢を起こす)でもヨーグルト(発酵乳)は飲めるからだ。昨今の日本人はカルシウムを摂り過ぎる!

カルシウムは筋収縮や神経伝達に必須な元素で、その細胞内濃度は厳密に調整されている。多少の余裕はあるが血液中のカルシウム濃度も一定範囲に調整されている。牛乳を介してカルシウムを日常的に大量に摂取すればどうなるか。過剰なカルシウムを尿中に排泄するか他の方法で処理しなければならない。この過程で過剰のカルシウムは尿路結石をつくったり血管壁に沈着したりする。

カルシウムはとくに血管内膜へのコレステロールなどの侵入によって形成される粥状斑(プラーク;この状態が動脈硬化)の周辺部に沈着する。心臓を養う血管(冠動脈)のプラークにカルシウムが沈着するとプラークは剥がれやすくなる。剥がれたプラークは血栓となって移動して冠動脈の内腔の細いところで栓塞を起こす。閉塞部以下の血流を阻害して組織壊死を起こす[19]。これが心筋梗塞である。

世界30ヵ国の牛乳・乳製品の摂取量と虚血性心疾患の死亡率の間には高度の相関関係(r = 0.779)が認められる(図3)[20]。

乳・乳製品を多量に摂取するスェーデン、フィンランド、ノルウェイ、デンマークなどの北欧諸国は虚血性心疾患の死亡率が高い。日本では幸いなことに乳・乳製品の消費量が少ない。したがって心筋梗塞が欧米ほどになることはないだろう。しかし、日本では脳梗塞が増えている。動脈硬化は欧米人では冠動脈に日本人では脳動脈に発生しやすい。

8. 現代の牛乳 − 年間10,000kgの牛乳生産はいかにして可能になったか

西欧とて昔から肉や牛乳の消費量が多かったわけではない。畜産品は貴重な換金食品であった。西洋人の牛乳消費量が増えたのは早くても1930年代以降のことであろう。SharpeとSkakkebaekは1993年にLancet誌上に発表した有名な論文[21]において「先進国では乳製品の消費量が多過ぎる。その傾向は1940年代から1950年代に始まった」と述べている。1890年代の乳牛1頭からの搾乳量はたかだか1日5L程度であったが、ヨーロッパの牛乳生産量は1930年ごろから大幅に増えた。

現在の遺伝的改良が行われた乳牛(たとえばホルスタイン)は1日に20-30キログラムの牛乳を生産する。しかも、搾乳されている乳牛のほとんどが妊娠している。自分の身体を維持し、胎仔を育てながら、なおかつ20-30キログラムのミルクを分泌することは尋常ではできない。まず、ミルクの元となるエネルギーを供給してやらなければならない。品質が改良されたとはいえ、牧草だけではこのように大量のミルクを生産することは不可能である(牛乳1日30キログラムは1万8千キロカロリー)。てっとり早いのは穀物を与えることである。

1908年にハーベル(Haber)が空気中の窒素からアンモニアを合成する方法を開発し、1914年にボッシュ(Bosch)がその大量生産に成功した[22]。この新技術が農民に安価な窒素肥料の入手を可能にし、穀物を家畜に与えられるほどに穀物生産量が増大した。さらに、1940 年代に始まり、1960 年代から1970 年代にかけて世界的規模で進行した「緑の革命」が一層の余剰農産物を生み出すことになった。この余剰穀物によってミルクの通年生産(自然条件に左右されることなく、人工授精によっていつでも乳牛を妊娠させ、妊娠後半にも搾乳できる)が可能になった[23]。人間の欲望はこれだけでは終わらない。さらなる奇策を考え出した。

私たちはウシは草原でのんびりと牧草をたべている動物であるとぼんやり考えている。しかし、与え方によってはウシは仲間のウシを食う。野生のゴリラは純粋な植物食であるが、動物園でビフテキを与えればよろこんでウシを食う。現在、日本では毎日4,000頭のウシ・ブタが食用に屠殺されている。大半の日本人はこれらの家畜の筋肉しか食べない(内臓の一部は食用になる。しかしその量はごくわずかである)。人間の食用にならない骨、内臓の大部分、血液、脳・神経、胃腸の内容物などは焼却処分される。食肉用に屠殺される動物だけではない。人間と同じく病気になって死ぬ家畜もいる。このような動物は人間の食用にはならない(ペットの餌にはなる)。死なないまでも病気のために動けなくなり、人間が屠殺場に引きずっていかなくてはならない家畜(英語のdownに倒れた、弱りきったという意味があるので、このような家畜をdownerという)もいる。これらも埋めるか焼却しなければならない。しかし、知恵者がいた。骨や内臓を加熱・脱脂したあと乾燥して粉砕する(この工程をレンダリングという)。この粉末(肉骨粉、英語でMeat Bone Meal [MBM]という)を草や穀物と混ぜれば、ウシは仲間のウシを食う。肉骨粉は、ミルクの生産に必須のタンパク質・カルシウムを豊富に含んでいる動物性タンパク飼料である。見方を変えれば、レンダリングは立派なリサイクルあるいはリユースである。かくて牛乳の大量生産が可能になった。日本で発生した狂牛病(BSE)の過半が白黒ぶちの乳牛であったことを奇異に思われた方もおられるであろう。現代酪農の牛乳大量生産が狂牛病の原因であったのだ。

9. 現代の牛乳

現代の酪農は昔の酪農と大きく異なっている(図4)

根本的な違いは「妊娠牛からミルクを搾るようになった」ということである。哺乳類は、出産後に乳汁を出すが、母親は子が乳汁を飲み続けている間は妊娠しない。子の鳴き声、乳首の吸引、乳房の突き上げなどによるプロラクチン・オキシトチンの分泌が排卵を抑制するからだと言われている。通常、子牛は生後3月ほどで離乳するから、出産3ヵ月後には妊娠可能になる。妊娠すると、通常、乳汁の分泌が少なくなる。ヒトと同様である。

ところが現代の酪農では、乳牛は妊娠しながらも大量の乳汁を出す。濃厚飼料を与え、搾乳器で吸乳し続けるからである。妊娠すると、子宮内に胎児を保持するために、血中の卵胞ホルモン(エストロゲン)濃度と黄体ホルモン(プロゲステロン)濃度が高くなる。したがって、妊娠中の乳牛から搾った乳汁にはこれら女性ホルモンが含まれている。ヒープとハモン[24]によれば、妊娠していないウシから搾乳した乳汁の乳漿(ホエイ)には約30pg/mLの硫酸エストロン(estrone sulfate:estroneの硫酸抱合体)が存在する。ウシが妊娠するとその濃度が高くなり、妊娠41-60日には151pg/mLとなり、妊娠220-240日には1,000pg/mLに達する。この硫酸エストロンは、口から入ってエストロゲン効果を示す女性ホルモンである。事実、妊娠馬の尿から抽出・精製した硫酸エストロンがプレマリンという天然経口ホルモン剤として医療に使われている。

現在の酪農家は4種類の乳牛から搾乳している(図5)。

妊娠していないウシ、妊娠前期のウシ、妊娠中期のウシ、妊娠後期のウシの4種類である。出産前の2ヶ月間(乾乳期)を除いて、すべてのウシから搾乳する。牛乳はタンク内に集められ、牛乳メーカーに出荷されているから、日本の牛乳(もちろん他の先進国においても同様)の4分の3(75%)は妊娠牛から搾乳したものである。女性ホルモンはステロイド骨格であるから、加熱滅菌によって分解しない。したがって、市販の牛乳は女性ホルモン(数百pg/mlのエストロゲンとその数百倍のプロゲステロン)を含んでいる。現在のアイスクリーム、チーズ、バター、ヨーグルトなどの乳製品は、みなこの妊娠牛からの女性ホルモン入り牛乳から作られている。

妊娠しているウシから搾った牛乳は、飲用で女性ホルモン作用を示す(ラットの子宮肥大試験で確認:第94回アメリカがん学会、ワシントン、2003年7月)。世の中のお母さん方は、自分の子どもが飲んだり食べたりしている牛乳や乳製品が妊娠している牛から搾られた牛乳から作られているなどとは夢にも思わないだろう。母親は、自分の出産経験から、子どもが母乳を飲んでいる間は妊娠しないと知っているからだ。妊娠しているウシの体液(血液・乳・尿)を子どもに飲ませる母親がいるだろうか。前思春期の子どもに毎日女性ホルモン入り牛乳を大量に飲ませるということは、極言すれば、前思春期の子どもに低用量避妊ピルを毎日飲ませているようなものである。

このホルモンは本物のホルモンであるから(ウシの女性ホルモンは人間のものと同一)、そのホルモン作用は外因性内分泌撹乱物質(環境ホルモン)の比ではない(およそ1万倍から10万倍強い)。1998年頃、環境ホルモンをめぐって世界中が大騒ぎしたことを覚えておられるであろう(シーア・コルボーン、ダイアン・ダマノスキ、ジョン・ピーターソン著、長尾力訳「奪われし未来」翔泳社、1997年9月;デボラ・キャドバリー著、井口泰泉監訳・古草秀子訳「メス化する自然 環境ホルモン汚染の恐怖」集英社、1998年2月)。日本でも、子どもを育てるのに母乳(PCB・ダイオキシンが含まれている)がいいか、人工ミルク(哺乳瓶からビスフェノールAが溶出する)がいいかという不毛かつ罪作りな議論がメデイアを賑わせた。

10. 現代牛乳の魔力

人間がこのようなホルモン入り牛乳を飲むようになったのはたかだかここ70年のこと(1930年ごろから)に過ぎない。この頃から、欧米で肺がん、大腸がん、乳がん、前立腺がん、卵巣がん、子宮体部がんなどのホルモン依存性の悪性腫瘍による死亡が著しく増えた(尿道下裂・停留睾丸・精巣悪性腫瘍などの小児生殖器異常の増加は言うまでもない)。日本でも生まれたときから乳・乳製品を飲んだり食べたりした人々(1960年以降に生まれた人たち)が大挙して40代に突入している(日本は30年遅れて欧米の跡を追っている)。最近、日本で市販されている牛乳がDMBA-誘発乳腺腫瘍(腺がん)に対して強い発生促進作用があることを確認した[25]。肺がんがホルモン依存性であると聞くとびっくりなさるかも知れないが、現在日本で急増している肺がんは腺がんである。もちろん、タバコと肺腺がんとの関係を否定するものではないが、タバコに関係の深い扁平上皮がんはほとんど増えていない。肺がんはともかく、男性の前立腺がん、女性の乳がん・卵巣がん・子宮体部がんの発生に牛乳が大きく関与していることは間違いない。

牛乳の乳がんに与える影響を観察した上記の動物実験を簡単に紹介しておく。詳しくは末尾に記すホームページを訪れていただきたい。7,12-ジメチルアントラセン(DMBA)を雌ラットに与えると、更年期後の女性に発生する乳がんによく似た乳腺腫瘍(腺がん)が高率に発生する。この実験では、雌ラットに5mgのDMBAを与え、翌日から4種類の液体(低脂肪乳、人工乳、硫酸エストロン水溶液、水)を与えて、DMBA乳がんの発生経過を20週にわたって観察した。人工乳はそのカロリーが低脂肪乳に等しくなるように調整した。その結果の一部を図6に示す。

DMBA乳がんの発生は、低脂肪乳=硫酸エストロン>人工乳=水 であった。

11. 日本の少子化問題

日本の合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産む子どもの数)がとうとう1.29(2003年)になってしまった。1950年には223.8万の子どもが生まれた。出生率(人口1000対)は28.1、合計特殊出生率は3.65であった。ところが、51年後の2001年に生まれた子どもは117.1万で、出生率は9.3、合計特殊出生率は1.33である。日本の将来に暗い影を投げかけているこの少子化の主たる原因は、青年の非婚・晩婚という社会現象によるものであろう。しかし、一方で、動物としての日本人の生殖能力が落ちているのではなかろうか。日本人の乳・乳製品の消費量(1人1日当たり)を年齢階級別に見ると(図7

前思春期の7-14歳(334.7g)と幼児期の1-6歳(237.7g)の消費量が突出している。因みに、性成熟期にある青年期(20-29歳)の消費量は128.3gである。前思春期はヒトの精巣発育にとって重要な時期であり[26]、内分泌撹乱作用を最も受けやすい[27]。精巣のSertoli細胞の数によって成長してからの精巣の大きさや精子数が決まる。ラットなどの動物ではSertoli細胞の数は胎仔期に決まってしまうが[28]、ヒトでは胎児期のみならず思春期を通じてSertoli細胞の質的および量的成長が起こる[26]。前思春期の少年では体内のエストロゲン濃度が極めて低いので、14歳以下の少年の性的成熟に対するエストロゲンの影響が大きい[27]。性発達過程にある幼少期に与えるホルモン入り牛乳が、日本人の生殖能力に悪影響を与えている可能性を否定できない。

小学校の先生は「他のものは残してもいいが牛乳だけは残すな」とおっしゃるという。また、「喉が乾いたら水の代わりに牛乳を飲め」という親がいるとも聞く。私は、一刻も早く、幼児・学童(ホルモンが最も少ない)にホルモン入り牛乳を飲ませることを止めて欲しいと考える。

欧米人に比べて日本人の牛乳飲用の歴史ははるかに短い。もし現代牛乳に悪影響があるとすればその影響は日本人により強く現われるであろう。実際、アジア人は欧米人に比べて精巣が小さく、精巣当たりSertoli細胞が少なく、その機能も低く、外来のホルモンによって障害を受けやすい[29]。豊かになったアジア諸国では合計特殊出生率が押し並べて低い。韓国1.19、シンガポール1.25、日本1.29である。現在の女性ホルモン入り牛乳を14歳以下の性腺発育期のアジア人児童に与えることを控えるべきである。

最近では、農薬を使わない牧草・穀物で乳牛を飼育するという「有機酪農」で実績を挙げている酪農家もいるし、パスチャライズド牛乳、脂肪分の多いジャージー乳、放牧酪農を「売り(付加価値)」にしているところもある。しかし、妊娠している乳牛から搾った牛乳は、どのように工夫しようとも、安心して飲める牛乳ではない。安全なミルクを提供する酪農の鉄則は「妊娠している乳牛からミルクを搾らない」ということである。妊娠していないウシが産生する乳製品なら(少量であることが前提である)、母親は安心して子どもに与えることができる。たとえ高価であっても日本の消費者は購入する。牛乳は子牛の飲みものであるから、本来、日本人には無用であるが、酪農家には敢えてこのように伝えたい。子どもはアイスクリームが大好きである。牛乳はなくてもよいが、アイスクリームがなくなるのは困るという。アイスクリームなどの乳製品はできるだけ食べないで欲しいが、どうしてもと言われれば、非妊娠牛からの牛乳を原料としたアイスクリームを与えたい(図8)。

なお、ミルクが妊娠牛からのものか非妊娠牛からのものかは、牛乳中のプロゲストロンを測ることによって簡単に識別できる。妊娠牛からの牛乳のプロゲストロン濃度は10ng/mlを超えている。出産後3ヵ月以内の牛乳(ただし出産後5日以内の牛乳は子牛に与える)を「非妊娠牛からの牛乳」、それ以外の牛乳は「妊娠牛からの牛乳」と表示して、消費者の選択権を与えることを提案する。プロゲストロンが10ng/ml未満を「非妊娠牛からの牛乳」、以上を「妊娠牛からの牛乳」とすることもできる。


12. サプリメントに頼ってはならない

地球上のほとんどの植物は毎日強烈な太陽光線(紫外線)を浴びている。しかも素っ裸で。植物も酸素を呼吸に用いている。したがって、植物は、衣服を身に纏っている人間よりも多量の活性酸素などのフリーラジカルに曝されている。長い進化の過程で、植物はフリーラジカルから身を守る術(すべ)を身につけた。b-カロテンなどの抗酸化物質である。b-カロテンはフリーラジカルが細胞を傷つける前に取り除いてしまうのだ。b-カロテンはどの植物の葉っぱにも含まれている。b-カロテンは2つのビタミンAからなる物質で、一部は体内でビタミンAになる。したがってビタミンAにも多少の抗酸化作用がある。

果物や野菜を多く食べている者にはがんが少ない。この事実とb-カロテンの抗酸化作用からして、b-カロテンやビタミンAのがん予防効果について介入実験を行うべきだという声が上がった。この辺が欧米人のおかしなところである。果物や野菜を食べれば足りるのに、わざわざ錠剤にして服ませようというのだ。

b-カロテンを大量に含むのは黄緑野菜や果物である。にんじん、サツマイモ、カボチャなどにはとくに多い。カボチャやミカンをたくさん食べて掌(てのひら)や踵(かかと)が黄色くなった(橙皮症)という人もおられるだろう。あれはb-カロテンの影響である。今ではb-カロテンの錠剤が手に入る。しかしあのようなものを飲んではならない。植物の中には純粋なb-カロテンが含まれているわけではない。同様なものがたくさんあってカロテノイドという形で含まれている。これらが一緒になって細胞をフリーラジカルの攻撃から守っているのだ。b-カロテンに抗酸化作用があるからといって純粋なb-カロテンを毎日服んだら益になるどころか有害である。

b-カロテンが肺がんを予防するかどうかを廻ってフィンランドで1つとアメリカで2つの大掛かりな人体実験が行われた[30-32]。1群の人たちに毎日b-カロテン(あるいはビタミンA)を服んでもらい、他方には偽薬(プラセボという。簡単に言えば、うどん粉を丸めて色も形も同じ錠剤にしたものである)を服んでもらって、その後の肺がん発生率を調べるという研究である。もちろん、対象者は自分の服んでいるものがb-カロテンであるか、偽薬であるかは判らないようにしている。いずれの研究も、b-カロテンの服用はがんと心血管系疾患に対してくすり(予防効果)にもならないが、毒(発生促進)にもならない(ときには毒になる)という結果であった。紙幅の関係で詳しく述べないが、関心をお持ちの方は末尾に記したホームページを訪ねていただきたい。

ある種のアミノ酸がうつ病に効果があるとか免疫力をアップするなどという話をお聞きになったことがあるだろう。きのこの抽出エキスに抗がん作用があるなどという話は泡のように生まれては消え、消えては生まれた。もっともらしい解説とともに、ある物質を加えるとマクロファージ(貪食細胞)が細菌やがん細胞を活発に攻撃する顕微鏡映像を見るとついつい信じてしまうひともおられるであろう。だからといって、その物質の錠剤を服んだら免疫力がアップし、がんが消失するなどということはない。私たちは、36億年という進化のプロセスを経た60兆もの細胞が協同して働いて、生きているのだ。

効果のないものでも効果があるように感じることがある。信頼する医師が「これを服めばぐっすりおやすみになれますよ」といって、不眠を訴えるひとに偽薬を手渡せば、その晩はぐっすり眠れるひともいる。しかし、数日すれば化けの皮がはがれる。「藁にもすがりたい」患者や健康志向の強い現代人を騙すことは簡単である。詐欺の種は浜の真砂ほどもある。種の尽きることはない。1つの物質を強調するひとの言葉を信じてはならない。本人にその気はなくてもそのひとは詐欺師である。

くすりの本質についても触れておかなくてはならない。くすりは短期間服用するものである。たとえば、感冒ウイルスが巣くって熱発する。咽頭に炎症が起こったためである(身体がウイルスと闘っている)。頭が痛い、身体が熱でフワフワする。このようなとき、私たちは解熱鎮痛剤を服むことがある。解熱鎮痛剤がウイルスをやっつけることを期待しているのではない。一時的に体調を整えて、身体に備わった力(自然治癒力)がウイルスとの戦いに勝利することを期待しているのだ。生物活性のあるくすりを長期間にわたって服み続ければ好ましくない影響が現われる。くすりがある機能にのみ作用して、他の機能に影響を及ぼさないなどということはない。だから、効くくすり(=生物活性のあるくすり)の服用は慎重でなければならない。もし、サプリメントが何らかの生物活性のある物質なら、毎日服むことによって好ましくない影響が現われる。幸いなことに、ほとんどすべてのサプリメントは毒にもくすりにもならない。したがって副作用もない。お金がかかるだけである。

13. 日本人の栄養学を

昨今はグルメ流行りである。テレビにグルメ番組の登場しない日はないといっていい。テレビ局こぞって放映しているところをみると、最近の日本人はグルメ以外に何の興味も持てないようだ。過度の「美味礼讃」は不健康である。グルメを礼讃する国では出生率が低い(生殖能力が落ちている)。日本が病んでいる。

食という行為は健康に生きるためだけのものではない。「乳製品が美味しい、肉が大好き」という向きはミルクを飲み、肉を食えばよい。そんなことは個人の勝手だ。「健康のために肉を食いミルクを飲む」というのは個人の愚かな行為に過ぎないが、それをことさら宣伝するのは不遜であり罪深い。日本人の日常茶飯(ケの食事=生きるために食べる)は「穀物+大豆+野菜(+魚)」がよい。肉を食べるのは冠婚祭などの特別の日(ハレの食事=愉しみのために食べる)だけでよい。外食でいただく肉料理の一品も結構だ。たまに食べる肉はまた格別である。

主食(メシ)と副食(おかず)からなる日本人の伝統的な食生活は日本人にとって最適である。玄米は栄養価が高い(精白米は不完全食品である)。宮沢賢治の「玄米四合ニ味噌ト少シノ野菜ヲ食ベ」は理にかなっている。もともとインスリン分泌の少ない日本人はコメのメシを食べても肥らない。コメからの摂取エネルギーが総エネルギーの50%を下回るようになって久しい。過去40年間でコメの消費量は半分以下になってしまった。

日本人は若い女性でも決してコメのメシが嫌いではない。メシを丸めた「おにぎり」も、「おにぎり」の上に生魚の切り身を載せた「スシ」もよく口にする。しかし、「おにぎり」の量があまりにも少ない。数個の「スシ」を食うと、あとは魚の切り身だけを口にして、「おにぎり」を食べないものもいる。値段の高いスシ屋の「おにぎり」の小さいこと! 戦後生まれのいわゆる団塊の世代は、母親から「ご飯はいいからおかずをお食べ」と言われて育った。戦後の学校給食もこの方向を助長した。メシの代わりにパンを食べることがなんとなく「文化的」な香りがしたのだろう。したがって、この世代は「コメのメシ=健康に悪い、格好がわるい」というイメージから抜け出せない。西洋で生まれた近代栄養学は西洋人(海水魚)の栄養学である。日本の栄養学は海水魚の栄養学をそのまま日本人(淡水魚)にあてはめようとしたものある。誤った観念を植えつけた「栄養素栄養学」あるいは「タンパク質・ビタミン栄養学」なるものから一刻も早く脱却したいものだ。

14. おわりに

文部科学省は、2003年5月30日付けで、「学校給食における食事内容について」という通達を各都道府県知事らに出した。ちょっと見には給食に牛乳を出さなくてもよいことになった。栄養所要量の基準として、給食からのエネルギー所要量は1日の所要量の33%となっている。つまり、全エネルギー摂取量の1/3を給食(昼食)から摂るとしている。それなのに、カルシウムは、1日の所要量の50%を学校給食でまかなうように通達している。これは、言い換えれば、学校給食に牛乳を必ず加えよという「強制」である。さらに、学校給食における食品構成について、この通達は次のように述べる。「牛乳については、児童生徒等のカルシウム摂取に効果的であるため、その飲用に努めること。なお、家庭の食事においてカルシウムの摂取が不足している地域にあっては、積極的に調理用牛乳の使用や乳製品の使用に努めること」。異種動物のミルクの危険性を知りながら、国があえてこのような通達を出すことは極めて罪深い行為である。

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また、本編の執筆にあたって下記の書物を参考にした。
・島田彰夫「食と健康を地理からみるとー地域・食性・食文化ー」、農文協・人間選書129、1988年9月
・鈴木猛夫「『アメリカの小麦戦略』と日本人の食生活」、藤原書店、2003年2月

日本人の皆様へ
あなたの健康を損なうおそれがありますので牛乳の飲みすぎ・乳製品の摂り過ぎに注意しましょう。

ご両親と学校の先生へ

牛乳の嫌いな子どもに牛乳の無理強いをしないでください。牛乳好きな子どもにも「咽が乾いたら水替りに牛乳を飲みなさい」などとは決しておっしゃらないでください。

医師の皆様へ
・妊娠女性に牛乳・乳製品を勧めないでください。まともな子どもが産まれません。
・更年期の女性に牛乳・乳製品を勧めないでください。乳がん・卵巣がん・子宮体部がんと骨粗鬆症が心配です。
・骨粗鬆症の予防になるからとお年寄りに牛乳・乳製品を勧めないでください。骨粗鬆症を招き、心筋梗塞・脳硬塞が心配です。
・中年男性に牛乳・乳製品を勧めないでください。前立腺がんと骨粗鬆症が心配です。

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