地球一年暦
(地球カレンダー)

物の見方や考え方が一変するような本を読んだり話を聞いたりすることがある。私の場合は1994年に拝聴した金岡裕一先生の「地球一年暦」に関する講演であった。衝撃を受けた。ひとり一人の人間は46億年の進化の歴史を背負っているというお話であった。

地球が誕生して46億年になるという。46億年は1兆6790日に相当する。地球一年暦(地球カレンダー)は、地球の誕生を1月1日0時0分0秒として、その後の出来事を1年にあてはめて眺める試みである(下図)。

46億年の進化とはいかなるものか、金岡先生(現・富山短期大学学長)の「人間. この小さな、ふしぎな存在−地球一年暦から−」(富山女子短期大学学生会機関誌『彩』30号巻頭言、1995年3月)の文章をそのまま借用する。

最初の微生物化石の発見は33億年前、春たけなわの4月のことで、真核生物の出現は18億年前、ずっと後の、早くも1年の半ばが過ぎた8月上旬になってからです。変異と自然選択が繰返される生物の進化なるものが、如何に長期の実験的プロセスであったかがうかがわれるではありませんか。そして動物と植物の分化は12億年前、9月になり、脊椎動物が現われ、動物が陸に上るのは4〜5億年前、もうすでに11月末なのです。1年の大部分が過ぎてしまっても、生物の進化は依然として長い長い“助走”の途上にあり、私たちの先祖はまだその姿さえ表わしていないのです!

地球上に人類が出現したのは、今から約200万年前だそうです。いくら高齢化社会とはいえ、寿命100年というわけにはいきませんが、簡単のために人生100年と試算しても、200万年は実に2万世代の繰り返し。想像を絶する積重ねの過程ですね。しかし地球1年暦でみるとどうでしょう。46億年が365日ですから、1日は1300万年に当ります。1時間が約53万年。したがって、200万年といってもわずか4時間足らずです。つまり私たち人類は、1年の最後の日・大晦日の、しかも最後の4時間前の午後8時頃、みなさんはあまり観ないかもしれませんが、紅白歌合戦が始まる頃になって、ようやく地球上に現われたことになるのです! お待たせしました。そして人類が創り出した“文明”らしきものの出現が約1万年前とすれば、これは1分前(1分は約8800年)、とうとう23時59分になってしまいました。

私たちからみれば大変に長い人間の文明活動の歴史も、地球1年暦からみれば、たった1分位というわけです。自然科学の進歩は驚異という外はありません。しかしそもそもこういった自然科学の活動全体が、たかだかここ300年位のことであり、1年暦でいえば、たった2秒間(1秒は145年)、除夜の鐘が鳴り出す直前の、瞬く間の出来事だったのです! この大自然の中にある私たち人間は、地球が46億年かけて創り出した“生命”という奇跡的大傑作を、たった“2秒間”で、自分達に内在する精緻極まる仕組みの一部を、自分達の頭脳で認識し始めた“ふしぎな存在”でもあるのです。

最近の遺伝子操作技術にはどうしても越えられない壁がある。46億年という進化の壁である。「地球一年暦」は私を根底から揺さぶった。金岡裕一先生のお話を聞かなかったら「牛乳の魔力」に気づくこともなかっただろう。金岡先生は本物の知識を授けてくださった生涯の師である。



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