アドベンティストの乳がんと前立腺がん

アメリカにセブンスデー・アドベンティストと呼ばれる、天地創造の7日目に神が再臨することを信ずる人々がいる。アドベンティストにはベジタリアン(植物食に徹する人)が多い。その独特の食習慣と健康に関する研究がアメリカで長期間にわたって行われている。

ハーバード大学のウィレット教授の研究*によると、アドベンティストは一般のアメリカ人に比べると長生きである。アドベンティストにはがん死亡が少ないが、不思議なことに男性の前立腺がんと女性の乳がん死亡は一般のアメリカ人並みである。
*Willett W. Lessons from dietary studies in Adventists and questions for the future. Am J Clin Nutr. 2003; 78(3 Suppl):539S-543S.

この謎をとく鍵は乳製品である。ベジタリアンの食事は基本的に植物を中心としたものなので、タンパク質やビタミンB12が不足すると言われている。そのため、乳・乳製品あるいは卵を食べるベジタリンがけっこう多い。ミルクや卵は動物の血を流すことなく入手できるからである。実際、1日3杯以上もの牛乳を飲む習慣の持ち主は一般アメリカ人の3%に過ぎないが、アドベンティストの20%はそのような習慣を持っているという。つまり、アドベンティストの多くはラクト・ベジタリアンで、しかも一般人より乳製品を多量に摂取している。

リンダ・マッカートニーは1969年に、ビートルズのメンバーだったポール・マッカートニーと結婚した写真家・料理研究家である。マッカートニー夫妻はそろってベジタリアンで、動物愛護の活動家でもあった。リンダはベジタリアン向けの著書も残した。その本にはいくつものミルクとチーズを使う料理が紹介されている。つまり、リンダはラクト・ベジタリアンであった。リンダは、1998年、56歳で亡くなった。死因は乳がんであった。


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