高炭水化物(糖質)/低脂肪食による糖尿病の治療ヒムスワース(1)は、高炭水化物(糖質)食(=低脂肪食)が健康者のみならず、あるタイプの糖尿病患者(インスリン感受性糖尿病)の耐糖能を改善することを今から65年も前に周到な実験計画と見事な実験手技によって確認したことは前に再々にわたって述べた。この高糖質食による耐糖能の改善はその後繰り返し確認されている(2-12)。 しかし、ヒムスワースに続いて糖尿病における高糖質食の治療効果を最も確実に確認したのは先にも少し触れたブランゼルである(7)。 前にも述べたが、インスリンが糖尿病の治療に用いられるようになるまで、糖尿病患者には糖質の摂取が厳しく制限されていた。インスリンが登場してから、糖質制限は多少緩やかになったが、それでもなお、糖尿病管理にはある程度の糖質制限は不可欠であるという主張が強く残っていた。 ヒムスワース(1)の発見は、健康者において糖質を制限すると経口糖負荷試験における耐糖能が低下し、高糖質食によって耐糖能が改善することであったが、糖尿病患者も高糖質食に対して同じように反応する。すなわち、インスリン依存型の糖尿病(1型糖尿病)患者が糖質の多い食事を摂ると、空腹時血糖値が低下する(13,14);耐糖能が改善する(13);インスリン要求量は不変か減少する(13-16)。 ブランゼル(7)は、85%の高糖質食によって22名の健康者と糖尿病患者全例において空腹時血糖値が低下することを示した。ブランゼルの研究は、健康者のみならず糖尿病患者においても、高糖質食が耐糖能を改善することを実証したものである。その詳細を以下に述べる。 健康者9名と軽症糖尿病患者13名を入院させた。全対象者に、高脂肪(タンパク質15%、脂肪40%、糖質45%)および高糖質(蛋白質15%、脂肪0%、糖質85%)の液体食を与えた。用いた糖質はデキストリンとマルトースの混合体(dextrin-maltose)で、十分量のビタミンとミネラルを添加した。液体食は、1日5回(午前8時、11時、午後2時、5時、8時)に分けて与えられた。摂取エネルギーは体重の変動が全実験期間を通じて1キロ以内におさまるように調節した。これらの液体食を8-10日間与えてから、午前8時に経口糖負荷試験を行って血糖を測定するとともに、試験前および試験中の血清インスリン濃度の測定を行った。耐糖能は、血糖曲線下面積を用いて判定した。 その結果、健康者および糖尿病患者のいずれにおいても、高糖質食によって空腹時血糖値が有意に低下した。高糖質食によって、空腹時のインスリン濃度も16%減少した(有意の低下)。また、高糖質食によって、糖負荷試験における血糖曲線下面積が有意に減少したが、インスリン濃度には変化がなかった。ただし、高糖質食によって、糖尿病患者の一人に尿糖が出現した(15 g/24時間)。他の人たちには尿糖は出現しなかった。 この研究では、糖質85%の高糖質食によって、対象者22名全員の空腹時血糖値が低下し、耐糖能が改善した。それにもかかわらず、糖負荷によるインスリン濃度には変化が認められなかったのである。 インスリン濃度は変わらないにもかかわらず、耐糖能が改善するというパラドックスが見られるのはなぜか。一つの説明として、体組織のインスリンに対する反応性(組織のインスリン感受性)が高まったことが挙げられる。この説明は、高糖質食を摂取していると、インスリンを与えたときに見られる血糖の低下が早く始まりかつその低下速度が大きいというヒムスワースの観察(1)によって裏付けられている。高糖質食によって空腹時血糖が下がるとともに空腹時のインスリン濃度が低下したことは、末梢組織のインスリン感受性が増加したことを示すものである。いずれにせよ、健康者および糖尿病患者において、糖質85%という高糖質食(しかも、糖質はデキストリンマルトースである)によって、空腹時血糖値が下がり、耐糖能が改善するという結果は興味深い。 ブランゼルの別の研究では、経口糖尿病治療剤(スルフォニルウレア)あるいはインスリンで治療されている中等度あるいは重症の糖尿病患者でも、高糖質食によって耐糖能の改善がみられた(17)。しかし、治療を受けていない極めて重症の糖尿病患者(インスリン分泌能が涸渇している)では、高糖質食によって、逆に耐糖能が悪化することもあった。したがって、多少ともインスリン分泌能が保たれていることが高糖質食を処方するか否かの決め手になる。もちろん、1型糖尿病におけると同様、分泌能が低下していても、治療にインスリンを用いているときには高糖質食の効果が期待できる(17)。 ブランゼルの研究では、一部の患者は最初から高脂血症(高中性脂肪血症)を示すものがいた。もちろん、これらの患者でも高糖質食によって耐糖能は改善したが、高糖質食によって血清中性脂肪が上昇した。中性脂肪の上昇はインスリン抵抗性を増し、空腹時の高インスリン血症と耐糖能異常を招くという報告(18)もあるが、ブランゼルらの研究では、高糖質食によって中性脂肪が増加しても、空腹時のインスリン濃度は逆に低下している。したがって、中性脂肪の濃度上昇が空腹時のインスリン分泌に影響を与えるという考えは支持されない。高糖質によって一時的に中性脂肪が高くなるが、高糖質食を長期間摂りつづけると中性脂肪は低下する(19)。 糖質の多い食事を常食としている日本人の糖尿病患者では、西洋人の患者に比べて耐糖能障害の程度が軽いし、合併症も少ない(20,21)。遺伝的背景は異なるが、日本人には肥満も少ない。高糖質食(低脂肪食)は耐糖能を改善するだけでなく、肥満も予防するのだ。肥満者が体重を減らそうとして、摂取エネルギーを少なくしようとするひとがいる。摂取エネルギーが消費エネルギーを上回ることによって肥満体になることは理の当然であるが、エネルギーを制限しても肥満は解消しない。身体は、摂取するエネルギーが少なくなると基礎代謝量を減らして対抗する。身体に備わった知恵である。したがって、摂取エネルギーを減らして運動しても体重は一向に減らないのだ。肥満解消に最良の方法はご飯(糖質)をたくさん食べて、インスリンの効き目を良くする(インスリンは少なくて済む)ことだ。糖質がよいからといってケーキ類(西洋菓子)は最悪である。ケーキには糖質以外にたっぷりと脂肪が入っているからである。 もちろん、肥満した糖尿病患者では耐糖能異常の治療として総摂取エネルギーの制限が重要であることはずっと昔から強調されてきた(22)。しかし、軽症の糖尿病では、体重の軽重を問わず、高糖質食(低脂肪食)が耐糖能を改善し、コレステロールも下げる。ただし、糖尿病患者における高糖質食(低脂肪食)のさらに長期間の影響を究明する必要がある。 1型糖尿病患者の食事療法をめぐって米国糖尿病協会の食物と栄養に関する委員会は、1979年、1型糖尿病患者は摂取エネルギーの50-60%を糖質から摂るべきであるという勧告を発表した(23)。この勧告には糖尿病患者の大部分を占める2型糖尿病患者の食事には触れていないが、この発表以降、多くの医師は病型にかかわらず糖尿病患者の糖質含有量を増やすよう指導するようになった。糖尿病研究の大御所である米国のリーヴン(Reaven)はこの米国糖尿病協会の見解に対して反論している(24)。まず、その反論を聞こう([ ]内は筆者)。 高糖質食の利点として強調されているのは、高糖質食がインスリン感受性を高めるという現象である。ヒムスワースがこの現象の発見者ということになっている。ヒムスワースはたしかに高糖質食によって健康者の糖質に対する反応(耐糖能)が改善することを見いだした(1)。しかし、これらの報告を仔細に検討すると、糖質が摂取エネルギーの10%のときには耐糖能が著しく悪化し30-40%になると耐糖能が改善されたというのである。そして耐糖能とインスリン感受性は一致していた。糖質の摂取をさらに60-70%にしてもさらなる顕著な耐糖能の改善は見られない。[しかし、これはリーヴンの誤解である。ヒムスワースはつぎのように述べている。『糖質の摂取量が50 gから150 gに増えると耐糖能の改善(血糖曲線下面積の減少)が著しい。糖質の摂取量が150 gから350 gに増えても耐糖能の改善は軽度である。しかし、350 gを越えると再び耐糖能の改善が高度に起こる』] ヒムスワースとほぼ同じような結果がブランゼル(7)およびアンダーソン(Anderson)(12)によって報告されている。ブランゼルは7人の健康者と5人の軽症糖尿病患者に45%あるいは85%の糖質を含む液体食を7-10日間与えて経口糖負荷試験によって耐糖能を観察した。血糖曲線下面積は糖質85%の高糖質食によって8%低下したという。血漿インスリン値が糖質の高低によって変化しなかったので[ただし空腹時のインスリン濃度は高糖質食によって低下している]、ブランゼルは高糖質食による耐糖能の改善はインスリン感受性の増加によるものであると考えた。また、アンダーソンは7人の肥満のみられない糖尿病患者において、糖質の摂取を1週間にわたって44%から75%に増やすと、経口糖負荷試験からみた耐糖能が11%改善したと述べている。やはり、アンダーソンもこの耐糖能の改善はインスリン感受性によって生じたと結論している。 このように、高糖質食はインスリン感受性を高め、経口糖負荷試験からみた耐糖能を改善するようにみえる。糖質摂取を45%から75-85%に変えたときに耐糖能が8-11%というわずかな改善がみられたということは、ヒムスワースの研究において耐糖能の著明な改善は糖質が10%程度の低糖質食から中等度の糖質に切り替えたときに認められるという結果に一致する。しかし、問題は、高糖質食によってインスリン感受性が高まるかどうかではなく、高糖質食によって果たして糖尿病患者の血糖値が下がるかどうかということである。[ブランゼルによると、高糖質食の最大の効果は空腹時血糖値の低下として現われるが、リーヴンはこのことに言及していない。] 高糖質食による糖負荷試験の結果の改善という生理学的現象はすでに今から60年ほど前にヒムスワースによって見いだされていることである。ヒムスワース(9)は、この現象は極めて複雑で、インスリン依存性(IDDM)とインスリン非依存性糖尿病(NIDDM)では高糖質食の影響が異なるとしてつぎのように述べている。『IDDMでは高糖質食によって尿糖も増えないし、空腹時血糖値も上昇しない。それにもかかわらず耐糖能の改善とインスリン感受性の増加がみられる。しかし、NIDDMでは高糖質食によって尿糖が増え、空腹時血糖値が上昇する傾向があり、耐糖能が悪くなり、インスリン感受性もほとんど改善しない。』[これもリーヴンの誤りで、ヒムスワースは糖尿病をIDDMとNIDDMに分類していない。ヒムスワースは糖尿病を「インスリン感受性糖尿病」と「インスリン非感受性糖尿病」に分類したのである。これがそのまま現在のIDDMとNIDDMに相当するわけではない。ブランゼルも、膵臓がインスリン分泌能を保持しているか(すなわち軽症糖尿病)、あるいはインスリンによって血糖が下がる糖尿病(「インスリン感受性糖尿病」)には高糖質食が効果を発揮するが、インスリンに反応しないような糖尿病(「インスリン非感受性糖尿病」)では高糖質食の効果はみられないと述べている。] これらの結果はある種の糖尿病患者では高糖質食によって耐糖能が悪化することを示すものだ。ブランゼルの研究では、糖質の摂取量を45%から85%に増やすことによって、空腹時血糖値の高い未治療の1名のNIDDM患者の血糖コントロールが悪化している。高糖質食によって血糖値が上昇し、15 g/日もの尿糖が排泄された。[リーヴンが取り上げている患者は「インスリン非感受性」の糖尿病である。ブランゼルの報告によると、インスリンあるいはスルフォニルウレア剤で治療を受けているNIDDM患者では、85%の高糖質食によって空腹時血糖値が有意に<平均22 mg/dl>低下した。この経口糖尿病薬が効く患者はインスリン分泌能が残存している糖尿病患者で、そのインスリン分泌能をスルフォニルウレアなどで刺激してやれば、インスリン分泌が増え、したがって高糖質食が効果を発揮するようになる。] さらに、ブランゼルは液体食を用いている。液体食は現実的な食事とは言い難い。キーム(Kiehm)の研究では、インスリンあるいはスルフォニルウレア剤で治療している13名の糖尿病患者の糖質を43%から75%に変えた。3名の患者には改善は見られなかったものの、10名の患者では空腹時血糖値がインスリンあるいはスルフォニルウレア剤の投与量を減少若しくは中止できるほどに低下した(25)。しかも、高糖質食を与えている間に体重が有意に減少した。体重減少が耐糖能の改善とインスリン感受性の増加をもたらすことは周知の事実であり(26)、体重減少が空腹時血糖値低下の原因であった可能性もある。キームの高糖質食には多量の繊維が含まれおり、これが食後血糖値を低く抑えた可能性もある。 高糖質食が糖尿病の管理に有効であることに関して最も説得力のある研究はシンプソン(Simpson)の報告(27)であろう。シンプソンは、12名のNIDDMの患者に6週間、糖質を34あるいは61%含む食事を与えて血糖の動向を観察した。24時間の血糖プロフィールは高糖質食によって低下する傾向を示したが、平均血糖値には差がなかった。しかしながら、空腹時血糖値が7.4から6.5 mmol/dl(およそ133から117 mg/dl)に有意に低下し、同時に糖化ヘモグロビンも9.5から8.3%に低下した。しかし、この研究で注意しなければならないことは、対象とした患者の大多数がスルフォニルウレア剤を服用していたということと、全粒粉パンが総摂取エネルギーの42%を占めていたということである。このような食事は現実的な食事構成とはいい難い。[スルフォニルウレア剤を服用していたということはインスリンが分泌されていることを意味する。高糖質食はこのような糖尿病にこそその効果を発揮するのだ。アメリカ人にとっては、全粒粉パンが総摂取エネルギーの42%を占める食事は現実的な食事構成とはいい難いのだろうか。] 高糖質食の糖尿病に与える影響に関する研究はこの他にも存在するが、ほとんどの研究は短期間の影響を観察したものである。このような乏しい情報のみで糖尿病患者に高糖質食を獎めることができるだろうか。たしかによく管理されたNIDDM糖尿病患者では高糖質食が血糖値に悪影響を与えることはないだろうし、尿糖の排泄量が増えることもないかも知れない。とくに、高糖質食に繊維がプラスされれば、血糖値が下がるかも知れない。インスリンで血糖管理を行っているIDDM糖尿病患者でも高糖質食が血糖に悪影響をおよぼすことはないだろう。しかし、管理のよく行われていないNIDDM患者では、高糖質食によって血糖値が上昇することもあることに注意しなければならない。 高糖質食を採用すれば実質的に脂肪の摂取量を低減することになるが、それでも糖尿病患者に高糖質食を獎めることができない理由は次の3点にある。1)高糖質食は低脂肪食であるが、糖尿病患者に高糖質食を獎めると砂糖の摂取量が増える。もし砂糖が増えれば、空腹時血糖値が低下することはないだろう。[リーヴンは砂糖悪者論者らしい。ブランゼルの高糖質食の糖質はデキストリン・マルトースであることに注目して欲しい。さらに、最終章の「砂糖と糖尿病」をお読みいただきたい。リーヴン自身、別の論文で、総摂取エネルギーの10%以内ならば、砂糖は糖尿病患者に許容されると述べている。]2)高糖質食は血糖管理がうまく行われている糖尿病患者にとっては利点があるが(17,27,28)、管理がうまく行われていない患者では高糖質食の効果は少ない。[インスリン分泌が枯渇している糖尿病には、インスリンを与えるか、インスリン分泌を刺激しないと高糖質食は効果がない。]3)高糖質/低脂肪食は糖尿病患者の血漿中性脂肪を高める可能性がある。糖尿病患者では一般に中性脂肪が高い。中性脂肪はIDDM糖尿病でも高くなるが、とくにNIDDM糖尿病で高くなる(29)。耐糖能異常のある患者では高糖質食によって空腹時の中性脂肪が多くなる(30,31)。この高中性脂肪血症は一時的な現象と考えられがちであるが、必ずしもそうではない。高糖質食による中性脂肪の増加が長く続かないという論文は南アフリカの囚人を対象にして行った研究だけである(19)。この研究は極めて低い中性脂肪値を示す人々(南アフリカのバンツー族)を対象にしており、高脂肪血症を示す糖尿病患者に適用できるとは思われない。[高糖質食と中性脂肪に関しては、後述の「2型糖尿病患者にとって高糖質食は有効か否かをめぐる討論」をお読みいただきたい。] 高糖質食が空腹時血糖値の高い糖尿病患者の血漿中性脂肪に与える影響はよく分かっていない。液体高糖質食によってIDDMおよびNIDDM患者の血漿中性脂肪値を有意に上昇せしめる。しかし、普通の高糖質食はIDDMでもNIDDM患者でも血漿中性脂肪値に影響を与えない。この問題は高糖質食を糖尿病患者に推奨する前に解決しておかなければならないだろう。一方、高中性脂肪血症は冠疾患の第一の危険因子ではないと考える向きもある(32)。しかし、この態度はいささか無責任である。糖尿病患者には冠動脈疾患が多いという事実があるし(33)、高中性脂肪血症は冠動脈疾患の危険因子であるとされている(34)。糖尿病患者に高糖質食を獎めるためにはこの高中性脂肪血症の問題を乗り越えなければならない。以上のことを考えると、糖尿病患者における糖質摂取量に関して間違いなくいえることは、低過ぎてはいけないということである。しかしどの程度が適当か、45%がよいか55%がよいか、などについては答えられない。残念ながら、単にインスリン感受性を高めるということだけでは高糖質食を推奨するわけにはいかない。高糖質食によって血糖値が1日の間で大きく変動するためにあたかもインスリン感受性が高まるように見えるのである。臨床的に明確に診断された糖尿病患者において血糖値および尿糖排泄に悪影響をおよぼさないことが確認されなければ、高糖質食を推奨することはできない。高糖質食の有効性が、糖尿病のタイプによって異なるのか、経口糖尿病剤あるいはインスリンで治療を受けている患者と受けていない患者で異なるのかどうか検証されなければならない。さらに、栄養のバランスがとれていて、かつ長期間にわたって口にすることができる献立が用意されなければならない。不幸なことに糖質が70-80%を占めるような食事に耐えられる西欧人は少ない。米国糖尿病協会がIDDM患者に糖質60%の高糖質食を獎めることは賢明ではないが、NIDDMには糖質60%の高糖質食は悪くないだろう。 ブランゼルによると(17)、インスリンによって血糖が下降するタイプの糖尿病(ヒムスワースの「インスリン感受性糖尿病」)では、糖質85%の高糖質食によって空腹時血糖値が下がった。リーヴンがいうように糖質が70-80%を占めるような食事に耐えられる欧米人は少ないかもしれない。それは欧米人の不幸である。彼らは、基本的に肉食であり、パンをおかずにして肉を食う。しかし、日本人は野菜や魚をおかずにして米を食べるから、糖質が70-80%を占める食事はどうということはない。欧米人とて、本元をたどれば高糖質食だったのだ。一般の欧米人が肉やミルクをたっぷり摂れるようになったのは20世紀になってからのことである。彼らは、食文化という重荷を背負って、低糖質食に耐えているのだ。欧米人が比較的糖尿病になりにくいのは、低糖質食で糖尿病になり合併症を起こすようなものは淘汰されてしまったからかも知れない。逆に、日本人は高糖質食で生き永らえてきた。米と大豆と野菜とわずかな魚肉で血と肉とエネルギーを得てきたのである。欧米人のようにタンパク質や脂肪からグルコースを新生して脳に送る必要がなく、脳が要求するグルコースはすべて口から入る糖質でまかなってきた。この日本人が低糖質食(高脂肪食)に移行すれば、その糖代謝は混乱するであろう。このことは先に紹介したツネハラのワシントン州キング在住日系二世の糖尿病罹患率が同年齢層のアメリカ白人の2倍という研究に現われている(35)。 |
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